第13話 逆襲の意次? 前編
俺の名前は奥洲天成。
前回は散々だった。
最悪クラスの連中をオールスター的に集めるなど、狂気の沙汰としか思えん。
「あれは本当に悪かったわ。今度は楽な仕事にするから忘れてちょうだい」
「いや、あまりに衝撃的過ぎて忘れるのは無理だ……」
と言いつつ、次の仕事が楽というのはありがたい。
「前世で失敗した者を、成功しそうな世界にあっせんする仕事よ」
「どんどん話が無軌道になっていくな」
まあ、この話もトータル250話が見えてきている。
いい加減、完全なネタ切れになるのも仕方ない。
「で、誰なんだ?」
「田沼意次よ」
ほう、田沼意次。
農村主義だった江戸時代の社会に、商業主義的側面を取り入れようとして、一定の成果は見たが、金権政治をやらかして評判が悪くなってしまった男だな。
「あれか。晩年の失脚ぶりが悔しいというわけか」
「いいや、そうではない」
おっと、本人が出て来たぞ。
「政治の世界は、魑魅魍魎が跋扈する仁義なき世界だ。わしもそこに足を踏み入れた以上、失脚という末路は覚悟しておる。だから、晩年失脚してしまったことに悔いはない」
「じゃあ、何が不満なんだ?」
「今の状況だ! 誰もわしを全面的に擁護してくれない! 『田沼意次にも良いところはあったよね』とまるでヤンキーにも良いところがあるかのように書く者がほとんどだ!
「それは仕方ないんじゃないか?」
「何故だ!?」
「だってさあ……」
ワタクシの名前は奥洲郁子。
田沼様の庇護を受け、日々働く仕事人ですわ。
おっと、そろそろお歳暮の季節ですわね。
用意したお菓子の下に切り餅(25両)を一つずつ埋め込んでおいて、と。
出費はデカいですが、これによって巨悪を滅ぼす大仕事が優先的に入ってきて、最終的にはより儲かるのですわ!
投資をして、リターンを得る。
これぞ資本主義ですわ!
「……誰だって、自分の主人公に汚職させたくはないだろう。ほとんどの人はあんたでなく定信を選ぶと思うよ」
「ガーン!」
「いや、ガーンじゃなくて……。だから、フィクション世界で味方が増えないのはもう仕方ないんじゃないだろうか」
歴史書などでは、意次と定信を比較したら、意次に軍配が上がるところもあるよ、と書けるだろうけれど、意次の完全勝利だよ、というのも難しいし。
「ど、どうすれば良いのだ!?」
「だからやっぱり失脚したのがまずいしんじゃないか? 前期のあんたはまあまあ良かったけれど、後期のあんたはダメだったって話もあるし」
「ぐぬぬぬぬ。つまり、政策を最後まで成し遂げるべきだったということか」
「それはあるんじゃないかな~。知らんけど」
「もっと親身にならんかぁ!」
「痛てぇ!」
「じゃ、あとはよろしく」
新居千瑛はそう言って、意次を残して去って行った。
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