第11話 史上最低の布陣・中編

 ということで、関ヶ原へとやってきたぞ。


 まずは様子見だが、四天王達がいなくなったことに家康はビビッている。

「一体、皆はどこに行ってしまったのだ? あいつらは何者なのだ?」


 それはそうだろう。本多忠勝がいないだけでも大混乱だ。

 しかも、代わりにいるのが袁家の疫病神・郭図と来た日には……


 とはいえ、決戦を前に、動転したところを見せられないようだ。どうにか平静を装っているが、すさまじい音を立てて爪を噛みしめている。

 天界でネコが適当にボタンを押して入れ替えてしまったせいで、大変だな。


 正体を現して協力してやらないといけないわけだが、その前に連中がどんな準備をしているか確認する必要がある。

 郭図以外は正直、知らないからな。


 ということで、まずはマクレランの陣地へやってきた。

 マクレランが双眼鏡を手にして、西軍陣地を眺めている。

「……敵は強い。我々より多勢を率いているようだ。ここは遅滞戦術を敷いて、ゆっくりと引いていくことにしよう」

「ははっ」

「我が子飼いを失ってはいけない。慎重に戦うのだ、慎重に、な」


 待てい。

 急いで関ヶ原までやってきたのに、下がってどうしろって言うんだ。

 あと、そんな消極的な作戦をとっていたら、小早川秀秋が西軍につくだろうが。

 こいつはどうにかしないといけない。


 続いて、マクシムスの陣地にやってきた。

 こちらはブルブルと震えている。

「相手はあれだけの数が揃っている。とても勝てそうにないな。援軍をまとう。援軍に戦ってもらおう」

 ……ダメだ、こりゃ。

 戦場にいること自体間違っている奴だ。

 もう替えてしまうしかないのだが、そうなると戦闘前に余計なトラブルを起こすことになる。果たしてどうしたものか。


 クリークはどうだろうか。

 お、部下を前に力強く何かを叫んでいるぞ。

「隣の部隊は何だ!? あんな美しくない槍で戦えると思っているのか? 武士なら刀を使え!」

 ……味方の文句を言っていた。

「でも、槍の方が長くないですか?」

「槍など弱者の武器だ! この美しい刀こそが、我々が使うにふさわしい」

「ですが、その刀は装飾重視で脆くないですか?」

「貴様、俺に文句を言うつもりか! 死刑にしろ!」

 開戦前から滅茶苦茶だ。


 カドルナの部隊にもやってきた。

「そこ! 足並みが一寸ほど乱れているぞ!」

「はい! 敵の斥候らしき者を見つけたので、何名か捕まえに行っています!」

「馬鹿者! 斥候など放っておけ! 我々は正面から堂々と敵を討ち果たすのだ! 斥候を捕まえるために隊列を乱すなど言語道断! 離れた奴を処刑せよ!」


 想像以上だ。

 これで本陣に行けば郭図が「豊臣恩顧の連中は信用なりません。隙を見て殺しましょう」とか提案しているんだろうな。


 勝てるわけがない。

 某ケンシロウなら「この軍はもう、負けている」くらい言いそうだ。

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