第10話 史上最低の布陣・前編
「あっ……」
女神代行の新居千瑛が声をあげた先には、一匹の猫がいた。「ニャア」とボタンをバンバン押して、それに伴い、転生システムが動いている。
自己紹介が遅れたな、奥洲天成だ。
「これは大変なことになったわ……」
機械を点検した新居千瑛が頭を抱えた。
「何が大変なんだ」
俺が尋ねるが、彼女は何も言わない。
「奥洲天成、何も言わずに関ヶ原に行って、徳川家康をサポートしてあげて」
「い、いや、ちょっと待てよ。何なんだよ……」
関ヶ原?
家康が勝つ戦いなのに、家康をサポートするってどういうことなんだ?
もしかして、西軍に滅茶苦茶強い奴がついてしまう展開なのか?
以前、ダーラヤワウシュ3世に転生して酷い目に遭ったが、アレクサンドロスとかナポレオン・ボナパルトとかユリウス・カエサルが最強軍組んでくるのは勘弁してほしいぞ。
「その逆よ。このネコはよりにもよって、最低の連中を徳川の主力と入れ替えてしまったのよ」
「最低の連中を徳川の主力と入れ替えた?」
「そうよ。
「郭図くらいしか分からんのだが……」
ただ、郭図は三国志で有名な負け軍師だ。
忠勝が郭図に変わったというのは由々しき事態だし、それに匹敵する連中が東軍の主力と変わってしまったようだ。
となると、東軍はとてつもなく弱くなってしまったのではないだろうか。
「このまま放置しておいたら、東軍は破滅的な被害を出して大敗するわ。いくら転生ありの世界といえども、ここまで家康に試練を与えていいものかしら。私の良心が咎めるのよ」
「でも、そこまでダメだと俺が行っても救いようがないんじゃないか? 鄭和と連合軍くらい組まないと」
「鄭和は昨日、アメリカに宦官制度を広めたいと言って、出て行ったわ。数日は戻ってこないわね」
「どうやってアメリカに宦官制度を広めるんだよ」
「南米から広めるって言っていたわ」
「うわ、それはありえそうだから嫌だな」
いずれにしても、ネコのせいでとんだ仕事が舞い込んでくることになった。
「この布陣で行ったからには負けは確実だけど、少しでもマシにしてもらえないかしら」
と、新居千瑛が言うくらいだから、余程とてつもないのだろうな。
心してかからねば。
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