第9話 マーニー・ハイイェー、懲りずに新興宗教を作ります・後編
ということで、俺とマーニーは現在、アラビア半島にいる。
マーニーと俺とではイスラーム軍に勝てない。
となると、一か八かだ。
アラブ最強の男ハーリド・イブン・アル・ワリードを説得するしかない。
俺達はクライシュ族の中にまぎれこみ、ハーリドを探した。
遂に、ある地下室で奴を見つけた!
『……ピピピ、シンニュウシャ、ハッケン』
「ま、待ってくれ。俺達は敵じゃない!」
『……データナシ、テキカミカタカフメイ。オマエタチ、ナニモノ?』
後はマーニーに任せよう。
「私はマーニー、この世界に完全無欠の宗教を広めたいと考えている」
『ピピ……?』
「私が今回考えた宗教は、創世論から終末論まで更にアップデートしている。更に、史実のこの地域では存在しなかった自由と平等、人権の完全保障まで盛り込んだ」
人権の保障が盛り込まれた宗教というのは、中々ないな。というか、それ宗教なのか?
人権保障したら、神の存在に矛盾が生じないだろうか?
神学に詳しくないから、ちょっと分からないが。
『ジユウトビョウドウ? ジンケン?』
「そうだ。未来のこの地域は、自由も平等もない修羅の国になってしまう。それをこの時代から解きほぐして、素晴らしい未来を築こうと思う」
まあ、確かにそれは一理あるかもしれない。
イスラームのせいというわけではないが、この地域は殺伐としすぎている。
もし、自由と平等の理念をこの地域にもたらすことができれば、それこそヨーロッパは完全に征服できるだろうし、インドや中国だって支配する。
となると、マニ教が世界唯一の宗教となる可能性がある。
「約束しよう! このオリエントに完全なる社会がやってくるということを!」
『ピピピ。オマエノイウコトハマチガッテイル』
「な、何……!?」
まさかのダメ出し!?
マーニーが動揺しているぞ。
『コノセカイハワレワレニトッテ、カスミノヨウナモノ。シンノセカイハワレワレノシゴ、カミノミモトニイッタトキニジツゲンサレル。ワレワレハコノクルシイヨノナカデ、スコシデモカミノオシエニチカヅクコトヲメザスコトコソタイセツ。コノセカイハカンゼンデアッテハナラナイ。シュラノクニデアルベキ』
うおー!
ロボット語(?)で難しいことを語るな!
作者すら混乱しそうだぞ。
「いや、そんなことはない。この世界だって完全であるべきだ」
『ダメダ。コノセカイはフカンゼンデアルベキダ。カンゼンヲメザス、オマエノイキカタハ、ウケイレラレナイ。ワレワレハシシテカミノミモトデヤスラグノダ』
ロボットが死後の世界を語り、人間が機械的な理想的世界を語る訳の分からん展開になってきた!
ただ、結局のところ。
『オマエタチ、コンカイハミノガス。モットベンキョウシロ』
俺達は追い返されることになった。
ハーリドを味方につけられない以上、勝ち目はないし。
「わ、私の宗教に欠陥があるだと……?」
マーニーは魂を殺され、廃人となってしまった。
どうやら、マーニーのミッションは失敗のようだ。
"千瑛ちゃんの一言"
「ハーリドを取り込むのではなく、ハーリドがムハンマドと敵対していた時に、ムハンマドを討ち取れば良かったんじゃないの?」
「あっ……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます