第6話 清少納言、同人業界に殴り込みます・後編

 遂に、遂に書いてしまいましたわ!

 あぁ、ジャッキーズも雲雀丘花屋敷歌劇団も同人誌になってしまいましたわ!

 もうワタクシ、どうでも良くなってまいりましたわ!

 人生、楽しまなければ損です! やってやりますわよ!


「そうザマス! 貴女も大分分かってきたようザマスね!」

「もう野となれ山となれですわー!」


 ワタクシ達を待っていたのは少しの絶賛と、ありあまる誹謗中傷。

 そして、名誉棄損訴訟でした。

 全部敗訴して賠償金が途方もないものになりましたわ。


「あぁ、落ちぶれてしまったでザマス」

 しかし、破産してしまいましたが、清少納言は何故か楽しそうです。


「このようなことは生前もあったザマス。中宮様が亡くなられた後、私は落魄らくはくしてしまったザマス。それに絶世の美女と呼ばれた小野小町も落魄伝説があるザマス。落魄は超一流の女につきものザマス」

「その途方もないポジティブ思考は羨ましいですわ」

 いくらワタクシでもそこまでにはなれません。

「それよりトータル400億の賠償金はどうするのですか?」

 家賃月1.4万の風呂もトイレもない、付近はクマやイノシシが出てきそうな田舎のボロアパートでワタクシ達はペンを走らせています。


「もちろん書くザマス。私は書いてこそナンボの女ザマスから」

「……まだ同人誌を書くのですか? これ以上やっても世間の目は『迷惑系配信者が懲りずにまだやっている』みたいなものになりますわよ」

「郁子さん、何を言うザマス。私の聡明な頭脳には、一度失敗した作戦にこだわって更なる失敗を続けるなんて発想はないザマス。既に作戦を修正しているザマス」

「本当でしょうか?」

「当然ザマス。中宮様に頼んで、皇室とコネを作ってもらっていたザマス」

 って、定子は転生していないのでは?


「こんなこともあろうかと、転生前に中宮様に一つだけ頼んでおいたザマス」

「ほほう」

 そんな裏技が天界にあったとは……

 有名人は色々と得ができるのですわね。

 しかし、平安時代の中宮がどうやって、現代の皇室に連絡をとるのでしょうか?

 さっぱり分からない世界ですわ。


「来たザマス!」

 ある日、清少納言がメールボックスを見て叫んでいました。

「遂に来たザマス! ニューヨークからの手紙ザマス!」

「ニューヨークから? ハッ、まさか!」


 そのまさかでしたわ。

 私達はニューヨークに行き、少し前まで話題だった元皇女と夫に会いましたわ。

 そこには同じく本国でははねっ返り者扱いされているアメリカ国籍の英国王子の妻もおりましたわ。

「タヴーに勇敢に立ち向かうセーショーナゴンの姿勢に惹かれました。私とケイの恨みの丈の日本語版を書いてクダサーイ」

「任せるザマス」

 かくして、ワタクシ達は世界中の疎まれし皇族達・元王族を大集結させて、『百王一首』という赤裸々日記を発売しましたわ!

 世界中で売れ行きはものすごいものになりましたわ!


 正義は勝つのですわ!



"千瑛ちゃんの一言"

「楽しそうで何よりだけど、多分そのうち消されるわよ」

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