第三部・中世人物の転生に付き添いました

第1話 千年王国の最強皇帝、滅亡間際に転生します・前編

 俺の名前は奥洲天成!

 あれ、第三部が始まっているぞ……


「新居千瑛、これは一体どういうことだ?」

「あら、奥洲天成。いらっしゃい」

「中世人物の転生に付きそうって、俺は補佐役になるのか?」

「そうよ。いい加減、150話も超えてくると、マンネリ化が進みつつあるわ。作者も段々飽きてきたのよ」

 まあ、それはそうだな。

 俺は何回失敗したんだというレベルで色々な人間に転生していたからな。パターン化の道を避けることはできない。

 と言って、これ以上、唐突に人物を増やすわけにもいかないから、俺達が傍観者なり助言者になるということか。

「そういうことよ。二部は完全停止ではないしシャー・アーラム編も予定されているけれど、趣向を変えた路線も必要と感じたのね。で、その映えある第一話は……彼が出て来るわ」

「彼?」

「千年王国の最強皇帝よ」

「千年王国?」

 となると、ビザンツ帝国か。

 その最強皇帝ということは……奴か?


 と、鄭和の声が聞こえてきた。

『あら~、そこの貴方。ここは部外者の出入りは禁止ヨ~』

『黙れ。誰の許可を得て、余に口答えしているのだ』

『あら~、貴方、永楽帝より偉そうねェン。ここはどれだけの権力者でも通ることはできないのよォ……へぶっ!』

 鄭和が一撃でやられた、だと!?

 というか、鄭和のあの姿を見ても、全く動じることなく重い一撃を決めやがった。普通の連中なら薄気味悪がるはずなのに、平然としている。

 ただものじゃない。


 廊下を進んで入ってきたのは、身長165センチくらいの小柄だが、オーラを漂わせる男だった。

「いらっしゃい。バシレイオス2世」

 やはりバシレイオス2世か。

 ビザンツで一番有名な皇帝はユスティニアヌス1世だろうが、最強となればバシレイオス2世だろうな。

「貴様が天界の主とやらか?」

「そう考えてもらって差支えないわ」

「余の帝国が滅びたというのは、本当か?」

「そうよ」

「認めぬ」

 えっ、こいつ、何を言っているんだ?

 認めるも認めないも、実際に滅んでいるんだし。

「滅んだと言っても、あんたが死んでから400年くらい経ってからなんだし……ぐはっ!」

「誰の許可を得て、余に口答えしているのだ……?」

「ここは天界だぞ……。おまえは皇帝でも何でもない……グホォ!」

「余の許可もなく、勝手に立ち上がるな」

 無茶苦茶言いやがる。

 しかし、その絶大な権力で誰も逆らうことができなかったというバシレイオス2世だ。それに、こいつは権力をただ行使するだけでなく、その行使者としてふさわしくあらんと妥協しなかった男でもある。


 皇帝としてのプライドの高さに高度な能力まで伴っているという点では、このバシレイオス2世か康熙帝が世界最強ではないだろうか。あとインドでアクバルか。

「余の帝国が滅んだというのなら、余が元に戻すまでよ。滅亡した時に行かせろ」

「……よろしいでしょう、バシレイオス。貴方の転生を許可するわ」

 新居千瑛が宣告した。

 というか、バシレイオスの奴、新居千瑛に呼び捨てにされても、許可されるような言い方をされても怒っていないぞ。これは不公平なのではないか?

「……余は女性を尊重する。男は従わないならぶん殴る。ブルガリア人の戦士は死ぬまでぶん殴る」

 ブルガリア人の戦士カワイソス。


 それにしてもバシレイオス、滅亡した直前に行かせろとは何という自信だ。

 新居千瑛は幽霊兼AIだったから、色々な知識があるが、バシレイオスにはそこまでの知識はないのではないか?

「滅亡寸前はさすがに可哀相ね。最後の望みがあった時期、マヌエル2世の時代に転生するといいわ。奥洲天成、あなたもついていってあげなさい」

「お、おぅ」

 いくら最強皇帝といえども、滅亡寸前の状況だと無理なんじゃないか?

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