第154話 シェール・シャーに転生しました・後編
アフガン族との戦いは熾烈を極めたワ。
あいつらと来たら、世界史という概念が出来て以降、ほぼ例外なく全ての期間を戦い続けているのだモノ。彼ら以上に戦闘民族という言葉が似合うのはサイヤ人くらいヨ。
それでも、どうにかこうにかアフガン北部を制圧したワ。
次は中国に向けて、オイラート部を叩かないといけないわね。
中国の北から西は広大な草原が広がっていて、この地は長らく遊牧民の土地となってきているワ。
この時代、この地はモンゴルとオイラートが勢力争いを繰り広げていて、モンゴルにアルタン・ハーンという英傑が出て優勢になっているのヨ。
ということは、アタシには二つの選択肢がある。
①オイラートを助けて、モンゴルを倒して恩を売る。
②モンゴルと組んで、オイラートをフルボッコにする。
もちろん、②よネ。
ユーラシアの掟は弱肉強食。
弱い者、隙を見せた者は、滅ぶのみヨ。
オイラートは三か月で滅亡したワ。
「モンゴルは中国で略奪したい。手伝ってくれ」
「いいわヨ」
ということで、アタシ達スール朝は西から、モンゴルは北から明に攻め込むこととなったワ。
歴史上、この時期は「北虜南倭」と呼ばれているワ。北からはモンゴルに攻められて、南からは倭寇などの海賊の略奪に遭っていたワケ。
そこに「西印」が加わるわけネ。
行き掛けの駄賃で、チベットにも攻め込むことにするワ。
既にパミール越えを果たしたアタシ達には、チベット高原もどうということはないわヨ。
「インド式宦官を受け入れなさーい♡」
「ふざけるな! 我ら格式あるチベットが、宦官ごときの支配など」
「宦官ごとき……?」
少年とキスしたいなんてトップが言い出すふざけた連中に「宦官ごとき」と言われるとさすがにむかつくわネ。
でも、アタシはそれでカッとなって虐殺なんて起こしたりしないワ。
ダライ・ラマ達を捕まえて、インドの宦官達に教育させることにしたワ。
どうせ21世紀にはインドにいるのだし、早い方がいいでしょ♪
それにしても、中国の宦官は堕ちたものだワ。
私が永楽帝の下で働いていた頃は、世界を調整しようと目を輝かせていた者ばかりだったのに、今では権勢欲にのみ目をギラギラさせている始末。
飛べない宦官は、タダの豚だわ。彼らもインドで再教育が必要ネ。
モンゴルが北京を攻めている間に、アタシ達は陝西省と四川省に攻め込んだワ。
現地の宦官達は全員インドに送って再教育ヨ。代わりにアタシが鍛え抜いた精鋭宦官を代わりに入れることにしたワ。家の調整はもちろん、軍の運営までこなせるスーパー宦官達ヨ。
ただ、さすがに三年もインドを空けていたあっては、インドの方も心配になってくるワ。そろそろ戻って、安定させないとネ。
"千瑛のひとこと"
「中国に送られた宦官はシェールの生きている時代だけ頑張っていたけれど、死後はだらけて中国と同化してしまったわね」
「インドに送った方は送った方で、アタシの死後に徒党を組んでインドの宦官までダメにしてしまったワ~ン。悪貨は良貨を駆逐するのネン♪」
「あるべき宦官のスタイルを書いた資料がない、というのも問題なのかもしれないわね」
「何でもありのインドだから何でもありの宦官が生まれたのヨン。あるべき姿を規定しても守られるわけないワ」
「ある面において、インドは中国より奥深かったということね」
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