第153話 シェール・シャーに転生しました・中編

 ということで、北インドに転生したわヨン。


 シェール・シャー、この時点ではシェール・ハーンだけど……、はデリー・スルタン朝の最後の国ロディー朝の支援のためにインドにやってきたアフガン人の子孫だったワ。

 ただ、ロディー朝はムガルのバーブルに滅ぼされていて、親はビハール地方の一総督のような地位についたのよ。


 アタシもその地域の一部を任されて、しっかりと治めて評判をあげてきたわ。その一方で旅行もしていて、ペルシャ語やアラビア語も習得したの。ムガルにも行ったのヨン♪

 もう少し調整して、中国にも行きたかったけど、ちょっと難しそうネ。


 ムガルは代替わりしてフマーユーンの時代になったワ。

 フマーユーンは個人能力は傑出していたみたいだけど、ちょっと抜けたところがあったのヨネ。統治も同じで不満が出て来たみたい。

 この時点で、何となく親の領地を統治していたアタシも含めて、多くの者がムガルに反旗を翻すことにしたノ。


 当然、反旗を翻した中では、アタシが最有力候補ヨ。周囲を制圧していって、みるみる領域を広げていくわ。



 シェール・シャーが凄いところは、宦官的な調整能力を備えている、という点ね。

 とにかく彼は行政マニアで、統治地域の行政機構をどんどん良くしていったの。


①全国的な測量を実施して、公正な徴税制度を導入

②主要街道を増設、更に整備して、隊商の宿泊所を1700か所造営

③癒着を防ぐために行政官は2年交代

④裁判の迅速化を促進

⑤軍内部の腐敗防止。シェール・シャーの軍が進軍中に誰かに損害を発生させた場合、全額補償


 すごいでしょ。


 これはアタシがやっているのではなく、シェール・シャー本人がやったことヨ。彼は僅かな統治期間でインドに大きなものを残したノ。

 ま、今回は僅かな統治期間では終わらせないけどネ。


 だから、一般人はどんどん味方してくれるワ。

 こうして、ムガル帝国をも上回ったアタシは、フマーユーンを追い出して、北インドの支配者になったの。


 アタシはシェールの制度を基本的に踏襲し、随所に有能な宦官を入れて、調整役として使うことにしたワ。これで更に良くなるはずよ。


 ただ、実は結構歳だから急がないといけないの。

 以前みたいに、成し遂げる前に寿命が来てしまっては溜まらないからね(南宋決戦参照)。


 デカン高原から南インドの連中と対立していたら厄介だから、ここは懐柔するしかないわネ。

 というよりも、これだけ立派な国を作っていれば、人民がどんどんやってくるものヨ。

 そうそう、言い忘れていたけど、アタシもシェールもムスリムだけど、ヒンドゥーを下に扱うなんてことはしないわ。

「酷い支配がお好みならそのままでどうぞ。良い支配を受けたいなら、スール朝へどうぞ」というわけよ。どんどんやってくるわ。

 そうなると勢力差は圧倒的だから、余計なことをしなければ向こうも仕掛けてこないものヨ。


 準備は整ったワ。

 目指すは中国・明王朝よ!

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