第147話 クリストファー・コロンブスに転生しました・中編
かくして、俺はコロンブスになって、マゼランのような人生を送らなければならなくなった。
俺の半生は不明な点も多いが、一応ジェノヴァの商人ということにしておこう。
この時代のイタリアは、基本的には低レベルで安定している世界だ。一部の連中を除いたらみんな貧乏で平等だ。
そんな環境を脱したいのなら、海に出て一山当てるしかない。
香辛料をドカーンと持ち帰ってくるとか、そんな具合だ。
「おぉ、クリストファー。おまえも海で一山当てたいクチか?」
先輩船乗りが尋ねてくる。
「そうなんすよ。やっぱり男は海に出てナンボでしょう」
俺はそう答える。実際には金持ちになるというより、ジパングに行くことが最終目標なのだが。
このイタリア地域で「船をもつ」ものは実は少なくない。
この地でみんなが船をもつ発想から、後々の株式会社や経理システムなどが生まれたのだ。
というのも、王室のような大富豪ならともかく、俺達のような一般市民には船を作る資金がない。
そこで、大勢の者が少しずつ出し合って、船を作り航海に乗り出すわけだ。
無事に一山当てることができれば、その収益金をみんなに配当金として配るというわけだ。
失敗すれば、みんなで少しずつ損をするわけで、これは諦めるしかない。
これがオランダで更に発展して、株式会社が出来たというわけだし、こうしたやりとりをきちんと証拠として残す必要があるため、公証人という仕事の必要性が増した。
レオナルド・ダ・ヴィンチも公証人の息子だったな。
閑話休題。
ジパングまで行くとなれば、船は数隻欲しいが、現実問題として「西回りにジパングまで行くんだ。だから出し合って、船を作ろうぜ!」と言って乗ってくれる奴は少ないだろう。
となると、選択肢は二つに絞られる。
史実でも取った王室に頼るか、あるいは最初は嘘をついて西回りで行くか。
当然ながら、嘘をつくのはリスクがでかすぎる。
この時代に限らず、船の上は完全民主主義制度が取られる。船員達に「この船長の言うことを聞いていては遭難する」と判断されれば、容赦なく船から放逐される。ハドソン湾などを見つけたヘンリー・ハドソンがこの好例で、計画にミスがあったとして船員らから降ろされて行方不明になったという。
「こいつ、俺達にウソをついてどうするつもりだ?」と思われれば、大西洋の真ん中で放り出されるかもしれない。
やはり王室が無難か。ただ、王室との交渉になると、条件闘争が面倒くさいことになる。史実のコロンブスは強欲だったという印象があるが、船員達の待遇面を考えれば、あまり譲歩もしていられない。交渉下手なのでそういう面倒は避けたいところだが……
あとは西回りに行くとして、どういう航路をとるかだ。
マゼランが選択したのは南米の南をまわるやりかた。つまりマゼラン海峡をまわっていくやりかただ。
あとはこの時代は運河はないが、パナマかメキシコ中部の平野を突っ切ってしまうというやり方もある。移動距離は大分短縮できる。
ただ、原住民の攻撃などを考えると、陸地で船をちんたら押すのは現実的ではない。遠回りになっても、マゼラン海峡をまわるべきだろう。
ちなみにカナダ北部を通るという北方航路もある。
しかし、これは19世紀のフランクリン隊ですら全滅してしまったルートだ。15世紀末の俺達が行くには危険過ぎるルートだろう。
ましてや、この時代は寒冷化が進んでヴァイキング達の入植地も全滅してしまった時代だからな。
ということで、方針は決まった。
スペイン王室との長い交渉劇が始まる。
※おまけ
女神が転生した話です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます