第146話 ジパングにたどりつけ ~ クリストファー・コロンブスに転生しました・前編
俺の名前は奥洲天成。
中世世界の転生者の中ではトップクラスに位置しているという評価を定立している。
女神が女神という地位から陥落した今、俺の活躍が中世部門を支えていると言っても過言ではないはずだ。
と、トラックに撥ねられた後、天界を移動しているとヒソヒソ話が聞こえてきた。
こっそり近づくと、女神代行の新居千瑛と、鄭和が話をしている。鄭和は実在人物のくせに積極的に転生していて、評価を確立している男だ。宦官というものを愛しているのが困りものだが、それ以外は凄腕だ。
「それでコロンブスなのよン♪」
「確かにコロンブスというのは面白いかもしれないわね」
話題はコロンブスのようだ。
鄭和がコロンブスの何かを買っていて、新居千瑛はそれを評価しているらしい。
コロンブスというのはもちろんクリストファー・コロンブスのことだろう。
ヨーロッパから西に行けば、アジアに行けると信じていた人物のことだ。
それは間違ってはいなかったが、彼はアジアにはたどりつけなかった。間にアメリカ大陸があり、彼はそれをアジアだと信じていたという。
実際には、その500年くらい前にヴァイキングがアメリカ大陸にたどりついていたという話もあるのだが、それは情報として伝わらなかったようだ。
ヒソヒソ話というものは気になるものだ。
俺は耳を澄ませる。
「だから~、アタシがコロンブスに転生したいのよね~ン♪」
「構わないわよ。貴方は一度や二度失敗してもS級から転落することはないし」
どうも失敗上等の転生をするつもりのようだ。
ひょっとしたら、「新大陸にはしっかりした政治制度がないから、宦官を普及できるわ~ン。アメリカ大統領は宦官だけの役職にするのよ」とか考えているのかもしれない!
いくら転生世界がリアルに影響しないとはいえ、そんな世界はさすがにやばい。この話がアメリカから睨まれてしまうかもしれない!
「ちょ、ちょっと待った!」
「あら、奥洲天成じゃない。どうかしたの?」
「コロンブスへの転生なら、この俺に任せてもらおう」
「……」
新居千瑛は「?」と、鄭和と顔を見合わせた。
「……いいわよ。コロンブスに転生するのね」
何だかあっさりと受け入れられたぞ。
ひょっとしたら、違う話をしていたのかな。
「……コロンブスに転生するのなら、勝利条件はアメリカ到達ではなく、西回りでアジアまで行くことになるわね」
むむっ、まあ、そうなるだろうな。
そうなると、コロンブスというよりマゼランになるのではないかと思えてくるが。
ともあれ、俺はコロンブスに転生することになった。
鄭和の野心を食い止めることができたのだろうが、俺は奴と違ってS級ではないから、失敗すると減点が痛い。
何としても、ジパングに到達するぞ!
※おまけ
女神が転生した話です。
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