第145話 始皇帝に転生しました・結末

 中国統一を果たした俺は、始皇帝を名乗り、政治改革を断行した。


 改革と言っても、度量衡の統一とか当たり前のことだけど、な。


 次代の皇帝の扶蘇は順当に育っていて、国内も安定、目ぼしい者は全員秦で要職を占めている。


 完璧じゃね?

 これ以上、何ができるのか。


 あぁ、不老不死か。


 不老不死は無理だろうなぁ。

 というより、徐福に騙されたのもマイナスポイントになるだろうから、これをバッチリ処罰してしまうか。


 そうこう準備しているうちに、徐福がやってきた。

「皇帝陛下、蓬莱ほうらい・方丈・瀛洲えいしゅうは東の果てにあり、そこにある霊薬で不老不死に」

「馬鹿者! そんなたわごとで俺を騙せると思うのか! こいつらを釜茹でにせい!」

 俺は徐福その他を釜茹でにして処刑した。

 これで俺の人生で失態はないはずだ。

 焚書坑儒も、まあ、やらずにおこう。


「はぁ……」


 あれ?

 何?

 今、空から溜息みたいなものが聞こえたんだけど!?


 ……いや、気のせいか。

 何だか疲れてきたのかな。

 そういえば、史実でもそろそろ死ぬ歳だったな。

 完璧な国が作れたはずだし、これで充分だろうな。


 どれだけ更新できるかどうかは分からないが、最高記録は間違いないんじゃないか?



"みんなの総括"

「……最高記録タイ。惜しかったわね」

「ば、馬鹿な! あれだけやったのに!?」

「天成の時代だけならベスト記録ね。だけど、国の存続という点ではかなり問題よ」

「何で!?」

「李牧や項燕や韓信がほうぼうで王をやっているのよ? 地方がその気になればすぐ大反乱だわ。扶蘇は有能ではあるけど、蒙恬という名家をつけた取り合わせは間違いだったわね」

「ま、まさか……」

「そのまさかよ。秦の名門である李信と蒙恬と王賁は、地方の王を許せない。キングダムで李牧が秦に降って、李信の上についたら読者は怒るでしょ? だから、彼らは李牧や項燕の権限を削ろうとして、内戦になってしまったわけ」

「何たることだ……」


「最強の布陣は、あくまでそれを制御できる皇帝がいてこそ機能するもので、そうでないなら過ぎたるは猶及ばざるが如しなのよ。天成、貴方はやりすぎたわけ。どこかで降りて、多少不満足な状態に戻すべきだったのよ。その機会もあったのに」

「機会があった? あっ、もしかして徐福を釜茹でにした時、溜息をついていたのはあんただったのか?」

「そうよ。あの段階で、貴方は皇帝を降りて不老不死と仙人を目指すべきだったのよ。弘法大師路線を辿ることによって、秦には永遠の皇帝としての始皇帝が存在し、締まった状態が続いたというわけ」

『ぐぬー、もし、そんなことをしていれば最高点を100点更新したと機械は試算しているわ。この古代の女神でも出せっこない記録をあっさり出しそうになるなんて』


「女神というと、結局、三人のトータルは最高点マイナス10点なわけか」

『ひえぇぇっ!? 嫌よ、死にたくないわ! 何で私が死なないといけないの!?』

「何だか三下の命乞いのようですわ」

「約束は約束よ。仕方ないわ」

『あんたが勝手にした約束でしょうが! 私のいないリアル中世なんて考えられないわ!』

「いなくなることはないでしょ?」

『うん?』


「……そもそも、ここは天界で死んだ面々しかいないのよ。死んでも大差ないわ」

『あぁ、確かにそうね。現代の女神は宝くじの一等前後賞が全部当たって喜びすぎで心臓麻痺を起こして死んだことがあったはずだわ』

「ここの女神とは違った意味でダメな奴だな……」

 それにしても、天界は死人ばかりというのは盲点だった。

 確かにここには死人ばかりだから、女神が死んでも結局ここに来るわけか。


『で、でも、女神の地位からは陥落してしまうわ!』

「それでも、陥落した次の場所で10勝できれば、また女神に戻ることができるでしょ?」

『あ、そういえば……』


 忘れていたんかい!

 というか、何で一々相撲の大関みたいなシステムなんだ、天界は。


「まあ、10勝できないまま平幕にいついてしまう人達も多いけどね」

「二けたは無理そうですわねぇ」

「確かに……」

『そんなことはないわよ! 私が本気になれば、中世でできないことはないわ!』

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