第141話 クレオパトラ・フィロパトルに転生しました・結末

 ぐぬぬ、ワタクシは一体どうすればいいのでしょう。


 考えれば考えるほど分からなくなってまいりましたわ。


 グラッ!


 地震!?

 このエジプトで地震が起きるんですの?

 幸い揺れは大したことがなく、神の彫像のうえに布が落ちただけでした。まるでターバンをかぶった神のようですわ。


 ターバン!?


 ククク、ククククク、アハハハハハハ!


 ワタクシは何とバカだったのでしょう!

 こんな簡単なことに気が付かないなんて。

 誰にしよう? 何故に1人でなくてはなりませんの?

 全て! 全員と結婚すれば良いのですわ!


 イスラームのように、4人と結婚できるとすれば良いのです!



 ローマはカエサルの死後、大混乱に陥ります。

 プトレマイオス13世があらかじめ死んで、ローマへの負い目が少ないエジプトにはローマにすり寄る必要はないのです。

 カエサル死後、糸の切れた凧のごときローマの主導者候補達の方から、こちらにすり寄ってくることは明白。ならば、精一杯足下を見れば良いのですわ。


 カエサルが死に、まずはオクタヴィアヌスが近づいてきました。

「エジプトにおいて、ファラオが協力できるのは家族だけですわ。婚姻しない限り、何もお約束できませんわね」

「わ、分かった。結婚しよう」


 アントニウスが文句を言ってきました。

「女王陛下。貴女とはカエサル様の時からの付き合いだったはず。どうして簡単にオクタヴィアヌスなんかと結婚するのですか?」

「彼にも申しましたが、ファラオが本当に信用するのは家族のみです。ですが、ファラオは複数の配偶者を持つことを否定しません」

「むっ、つまり、私も貴女と結婚するということか」


 こうしてアントニウスとも結婚したところ、オクタヴィアヌスが文句を言ってきました。

「ファラオは複数の相手と結婚することを否定しません。しかし文句があるのなら離婚も拒みません。そうなれば、ワタクシとアントニウスの二人がかりでボコるだけですわ」

「くっ.......」


 ローマの両頭を手懐かせたところ、パルティアがやばいと思ってやってきました。

「オホホホホ! ワタクシ、パルティア王オロデス2世と婚姻することも差し支えありませんことよ!」


 何ということでしょう!

 ワタクシはローマの両頭とパルティアとの間に姻戚関係を築きました!

 つまり、オリエント世界はワタクシのものですわ!



 ワタクシは3人をアレクサンドリアに呼び出し、世界平和結婚式を開催することにしましたわ!

 3人共、ここまで来るとワタクシから離れるわけにはいきません。そうなると残りの3人にボコられるわけですから。

 そして、ワタクシも3人を捨てないのであれば、地中海は永遠に平和です。

 素晴らしいことですわ!



「あ、姉さん」

「おや、どうしましたか? プトレマイオス14......ではなく13」

「実は......」

「ワタクシは忙しいのです。侍女にでも頼んでおいてくださいな」


 世界平和結婚式はつつがなく行われ、何事もなく進行していきます。

 あぁ、ワタクシ、地中海の支配者となったのですわ。

 ついに、悪女の中の悪女に上り詰めたのですわ。


 頭の中を、これまでの様々な失敗がよぎってまいります。しかし、今、ワタクシは遂に頂点に立ったのですわ!



「うっ!?」

 しかし、その瞬間、アントニウスが胸をおさえて倒れました。

 更にオクタヴィアヌスも!? えっ、オロデス2世も!?


 い、一体、何が起きたんですの!?


「だ、だから、僕が飼っていたタイパンが3匹逃げ出してしまって」


 タイパン!?

 タイパンというと、オーストラリアに住むという世界で3番目の猛毒をもつ蛇のことですか? 何で、そんなものをプトレマイオスが?

 あぁ、こいつ、ワニとヘビが大好きだったのですわ! 手を尽くして取り寄せていたのですわね!

 せめてインランドタイパン(内陸タイパン)なら、臆病だから噛まなかったのかもしれないのに。


 などとどうでもいい動物知識をひけらかしている暇はありません。


 この状況によってどうなったか。

 ローマの両頭と、パルティアが復讐戦争を仕掛けてくることが目に見えています。

 エジプトが3勢力にフルボッコにされるのですわ。


「やってられないですわー!」


 ワタクシは、タイパン3匹の中に飛び込みました。



"みんなの総括"

「あ〜、オリエント支配寸前まで行けたことと、まさかの三人同時結婚というのは高評価だが、終わりがアホすぎるので最高点には20点及ばなかったか......」

『アハハハ! 途中まではビックリしたけど、面白かったわ!』

『郁子ー! このどアホー!』

「ワタクシのせいではありませんわ! 弟が、弟が悪いのですわ!」

「でも、クレオパトラと言ったら毒蛇よン♪ ヘビが出た時点でフラグ意識すべきだったわネ♡」

「くぅぅぅ、そ、そういえば新居千瑛!」

「何かしら?」

「フィロパトルを意識せよとはどういう意味でしたの!?」

「たいしたことはないわ。ベレニケと父が対立した時には、父についた方が得よと言いたかっただけ」

「それならそうと言ってほしいですわー! 思わせぶりな風に言わないでくださる!? あっ、痛い! ダ女神、サソリ固めはやめてくださいまし! 痛いー!」

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