第138話 目指すは真の悪女 ~ クレオパトラ・フィロパトルに転生しました・前編
何だかよく分からないうちに、ワタクシ達は古代の三人に転生し、最高点を出す必要が出てまいりました。
まずは鄭和がハンニバルに転生し、見事に最高点を叩きだしましたわ。
宦官へのこだわりさえなくせば、本当に頼れる存在です。
女神代行の新居千瑛が、古代の女神から渡されたリストに目を通しています。
「さて、二人目は……クレオパトラね。誰にしようかしら?」
「クレオパトラ!? ワタクシ! ワタクシが行きますわ!」
世界史でももっとも高名な悪女の一人!
とうとう、ワタクシ、クレオパトラになる日が来たのですわ!
彼女は無言でワタクシを見ます。
「……やりたいの?」
「もちろんですわ!」
「クレオパトラという女王は史実に7人いるけれども、本当に大丈夫なの?」
まさかのクレオパトラ違い!?
「そうよ。スペインでレアルと言ったら、レアル・ソシエダであって、レアル・マドリードではないのよ。スペインにレアルの名前のつくチームが沢山あるように、エジプトにもクレオパトラのつく女王が大勢いるの」
分かるような、分からないような喩えを持ち出されましたわ。
「ち、ちなみに今回のはどんなクレオパトラですの?」
「そうね。ユリウス・カエサルと子供を作って、オクタヴィアヌスに負けて死ぬクレオパトラだわ」
「えっ、それは……」
多分ワタクシのイメージするクレオパトラだと思うのですが、ダ女神に何度も騙されたことがあるので、確信がもてません。
不安ですわ。
「他に胎児が男か女か言い当てるために、女使用人の腹を裂いて確認したなんて話が残っているわ。結構当たったらしいわね」
「ぐ、ぐぬぅ……」
全然知らない話なうえに、それをやるのは悪女というより単なる悪い女ですわ。
違う気がしてきましたわ。
「毒蛇に噛ませて死んだらしいわね」
むむっ!
それはワタクシの知るクレオパトラですわ。
って、これ。ワタクシ、ミルクボーイの漫才みたいに行ったり来たりさせられているのではないでしょうか?
「やるの?」
「ち、ちなみに残る一人は誰ですの?」
「秦の始皇帝ね」
「そ、それならやりますわ」
違うクレオパトラかもしれませんが、始皇帝では悪女の何たるかも味わえません……あ、母親はちょい悪女ぽかったかもしれませんが。
それなら、クレオパトラにすべきでしょう。
まあ、仮にはずれでもエジプト女王になっている時点で多少は悪女なはずです。
「……随分な決めつけね。ちなみにクレオパトラ7世フィロパトルという名前なのだけれど、フィロパトルというのは『父の栄光』とか『父が大好き』を意味するわ」
「前者と後者で大分意味が変わってきますが?」
父が大好きな女はちょっとまずいですわ。
とはいえ、エジプトといえば近親相姦の国、全くありえないではないのが恐ろしいですわね。そもそもワタクシの知るクレオパトラも弟と結婚していましたし。
「この名前のことをよく考えなさい。そうすれば勝利が近いかもしれないわ」
「わ、分かりましたわ……」
父が大好きを意識?
どういうことなのでしょう?
よく分かりませんが、とにかくエジプトに行きますことよ。
"外野の一言"
「あれだけクレオパトラとかなりたがっていたのに、『7人いるけど間違いない?』とか言われるとビビってしまうもんなんだな」
『というか、クレオパトラが7人いるなんて普通知らないでしょうしね』
「クレオパトラに転生できると思ったら、遥か昔の3世でしたの話はチラッと考えていたらしいが」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます