第134話 【番外古代編①】 水陸最強を目指せ ~ ハンニバル・バルカに転生しました・前編

『ぜぇ、ぜぇ……』

「あれー、女神じゃん。今、何周?」

 女神はノストラダムに転生して、世界を滅ぼすという離れ業をやってのけたので罰走として天界三万周を課せられている。

『ご、549周よ……』

「全然じゃねぇか」

『う、うるさい! 文系女神がそんなに走り回れるはずがないでしょ! うん?』

「おや?」

 急に空が暗くなったかと思いきや、ドカーンという音とともに女神によく似た女が現れた。


『アハハハハハ! 中世の女神、罰走中というのは本当だったのね!』

『うるさいわよ!』

「あれ、誰?」

『私から自己紹介してあげるわ! 奥洲天成! 私こそ、天界でもっとも美しい・古代の女神よ!』

「へ、へぇ……」

『中世の女神が罰走中なら、機能停止しているでしょ! この天才超美少女・古代の女神様が中世も担当してあげるわ!』

 いつもの女神に輪をかけて騒々しい奴だな……


「どうかしたの?」

 ふわふわと幽霊の新居千瑛が現れた。

「あ、女神代行。いや、古代の女神って奴が中世を乗っ取りに来た」

「古代の女神?」

『な、何なのよ!? 幽霊なんかが中世の女神役を司っているの!?』

「それが……、代理になってから中世は絶好調ですわ」

 郁子がモニターに成績表みたいなものを映す。

 数日前まで中世は酷い成績だったが、それからの三日で三か月分のスコアを叩きだし、近世と現代を追いかけている。


 つまり、古代、最下位じゃね?

 最下位なのに、面倒見るも何もないような。


『じょーだんじゃないわよ! 女神じゃない奴が司るなんてナンセンスだわ! 中世を寄越しなさい!』

「嫌よ。暇つぶしが出来て楽しいもの」

 身もふたもない答えだ。


 しばらく押し問答。


『……というわけで、古代の三人に転生して、古代側転生記録を塗り替えなさい! あんた達が負けたら、中世は私のものよ!』

 何だか分からないが勝負することになった。

「いいわよ。ついでに女神の命も賭けましょう」

『どえぇぇぇぇっ!? 勝手に賭けるな!』

「何よ。司るもののない女神なんて生きていても仕方ないでしょ?」

『め、女神の命を勝手にかける幽霊なんて初めて見たわ……』

 古代の女神がビビッているぞ。これはチャンスか?


 ともあれ、話は成立した。

 古代の女神が三人分の転生書を新居千瑛に渡す。


 一発勝負で記録更新は大変だが、中世には絶対エース新居千瑛がいるから、分の悪い勝負ではないはずだ。

「私は行かないわよ。女神代行だし」

「えっ、そうなの?」

「まずは……ハンニバル・バルカね。これは鄭和、貴方に任せようかしら?」

 新居千瑛が転生状を鄭和に渡した。


「アタシの出番ということネ?」

「そうよ。私があなたに任せた意味というものを理解して頂戴」

「……?」


 ハンニバル。

 カルタゴの指揮官としてローマと戦い、派手に苦しめたが、最後は敗れ去った。

 果たして、鄭和はどのような生き様を見せてくれるのだろうか?

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