第131話 李顕(唐・中宗)に転生しました・中編
唐の中宗に転生した俺だが、生まれたばかりでいきなり大ピンチだ!
母親の武照(後の武則天)が、いきなり「自分の子にふさわしいか示せ」などと要求してきている。
考えてみれば、武照は後宮内のライバルを追い落とすために生まれたばかりの子供を殺したとも伝えられている。
それ以外に成長した長男と次男も反抗的だったので、上は殺され、下は自殺を強要された。
このまま使えない赤ん坊だと思われたら、「キミには失望した。ボクの息子たる資格はないから死んで楽になると良い」とか言われて首を絞められるかもしれない。
い、いや、しかし、史実では切り抜けているはずだ。
本物のようなボンクラが切り抜けられるなら、俺だって切り抜けられるはず……
赤ん坊に出来ることといえば大声で泣くくらい。
そうか、元気を示せということか。
俺は力いっぱい泣いた。
「……少し物足りない気もするが、高望みも良くないか」
どうにか生き延びた。
生まれた瞬間に恐怖を植え付けられたので、もう逆らおうなんて気にもならない。逆に上の二人はどうして刃向かえるのだろうか?
待てよ、最初顔がどうこうと言っていたな。
ひょっとしたら、上二人は顔がいいから、第一段階でクリアしたのか。それも酷くないか?
ともあれ、俺は母の時代は余計な事をせず耐えるしかないと決めている。俺は両親にあてがわれた(もちろん母主導)家庭教師の下で勉強しながら、ニート生活を続けることにした。
16の誕生日、母が部屋に来た。
母親に部屋に入られれば、普通のニートはキレるだろうが、相手が相手だ。
キレたりしようものなら俺が殺されてしまう。
「は、母上様、突然何用でございましょうか?」
「
「……そうですね」
「ボクはこの娘が良いと思うんだが、キミはどう思う?」
母が似顔絵を渡してきた。
ちょっと待てよ。
ここで、俺をぶっ殺すことになる韋后を紹介されるわけだな。
ということは、この縁談を断って、別の娘と結婚すれば、俺は勝利ということにならないか?
よし、母に歯向かうのは怖いが、ここは断ろう。
「母上、私にはこれと決めた娘がおりますので、できればこの話はなかったものに」
「ほう……。全く部屋から出ないキミなのに、そんな娘がいるんだね。まさか書物の中の娘とか言わないよね?」
「ま、まさか!」
「分かった。キミが決めた娘がいるのなら、それでいい。ヘーカに伝えておこう」
母は意外とあっさり引き下がった。
家柄とかそういうものには、色々後ろめたいことがある母だ。
自由恋愛には口出しできないみたいだな。
見合いは断ったが、考えてみれば、俺には相手になる子などいない。
と言って、母に嘘をついたなどとバレれば大変なことになる。
仕方がない。母が一番可愛がっている妹の
後の太平公主で、母も「この子はボクの補佐役になってくれそうな聡明な子だ」と評価している。
「どったの? 兄さん」
令月は九つ下の七歳だが、貫禄十分だ。
陰キャな俺が彼女に頼み事をしている様子は、傍目には幼い主人に下僕がひれ伏しているように見えるかもしれない。
「実は……」
俺は正直に言い、どうしたものか尋ねた。
「それで母様に怒られるのが嫌だから、私に探せというわけね」
「い、いや、探せというわけではなく、俺と一緒に母と謝ってくれないか?」
俺が言い訳する間、令月は庭を見ていた。
「あの人なんかどう?」
「あの人? おぉっ!?」
中庭を歩くのは、つぶらな瞳に小さい顔、美しい髪に、華奢で細めの子だった。
この時代から楊貴妃くらいまでは、大型の女性が好まれるが、周りがそういうのばかりだと、小柄で可憐な子が天使のように見えてくる!
※第二部4話~の楊貴妃編も参照
「あの子はいいなぁ」
「じゃ、あたしが話してみるね」
令月が庭に出て、彼女と話す。こちらの方を見て、ニコッと笑った。
成功だ!
「是非とも結婚したいって」
「あ、ありがとう! 令月」
「それじゃ、お互い自己紹介してくれる?」
「俺は李顕」
「私は、
「え、韋静……?」
「はい」
彼女は溶けるような笑みを浮かべた。
何てこった!
こいつが韋后かよ!
おまけに7歳の妹に結婚相手を探してもらったなんて超絶情けない話だ。
太平公主が長い間、国政に携わっていたのも頷ける話だな。
"千瑛ちゃんの一言"
「韋后も個人の名前は伝わっていないの。中華ドラマで韋后役に
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