第130話 回避せよ、女難の人生 ~ 李顕(唐・中宗)に転生しました・前編
俺の名前は奥洲天成。
今回の俺の人生は失敗だった。誰とも付き合えずに人生が終わってしまった。
「ちわーっす。死んでしまいました」
「いらっしゃい。奥洲天成。転生に来たのね」
現れたのは女神……
ではなく、女神代行の幽霊・新居千瑛だ。
本来は女神がいるのだが、大失態をして天界三万周の罰走を課せられているらしい。
「奥洲天成、あなたにチャンスをあげるわ」
「チャンス?」
「あなた、ランク的にはA+転生者でしょ? これがSランクになれば、転生航空機は常にファーストクラス、天界駐車場も使い放題。あと、あなたの名前の弁当が飛行場で売り出されるわ」
そんなランクがあったんかい! 一度も聞いたことがないぞ!
Sランク待遇……、まるで相撲の大関みたいな待遇だが、なれるものならなってみたい。
「ただ、当然ながら簡単な相手ではなくなるわ」
「誰に転生するんだ?」
「唐の中宗・李顕よ」
「確かにロクでもない奴だな……」
皇帝になった後、妻の言いなりになって母親に激怒されて皇帝を廃位され、母の死後返り咲いたものの、妻と娘に殺されたという悲惨極まりない境遇だ。
ただ、母親の則天武后に敵わないのは仕方ないが、妻に関しては本人がもうちょっとしっかりしていれば何とかなったんじゃないかとも思う。
有名だけど実際のところそこまで有能でもなかった玄宗の時代に唐が全盛期を迎えたのは、則天武后の残したスタッフが優秀だったからだ。
うまいこと立ち回れば、中宗の時代に唐の最盛期が来たという可能性もある。
逆転人生という点では、こいつほどそれがあてはまる奴もいないのかもしれない。
「よし。転生しよう」
「決定ね。それじゃ、あっちのプリンターから航空券その他が出て来るから、それを持って飛行場に行ってもらえるかしら?」
手はずが良いなぁ。
そういえば日頃は転生希望者が行列をなしていて、酷い時など処理しきれずに、しりとりをして転生先を決めていたなんてこともある。あの時、鉄アレイとかイノシシとかシカに転生させられた連中は無念だったろうなぁ。
今は待機者がいない。
こんなに変わってしまうものなのだろうか。
とりあえず、転生航空機に乗って出発だ!
オギャア、オギャア!
おっ、生まれたか。
すぐに抱き上げられたぞ。
「……君がボクの第四子か」
物凄く落ち着き払った女の声が聞こえた。
「……ちょっと冴えない顔をしているが、顔が全てを示すものではないからいいだろう」
生まれたばかりの子供に随分な言い草だな。
「問おう。君にはこのボクの子たる資格があるのか?」
は?
「君は、この武照の子にふさわしいのか。それを示してもらおうか!」
いや、いや、いや!
何を言っているの、この女!?
新生児に何を示せと言うんだよ!?
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