第129話 ミシェル・ノストラダムスに転生しました・後編
いよいよ、預言者としての活動が始まったわ。
ここで何を残すかによって、ノストラダムスの今後が決まる。
1999年7月の予言が外れたと言われているから、これは当然外すものとして、次は何を入れたものかしらね。やはり9.11になるのかしら。リーマンショックも予言しておいて、大震災も入れておくかしらね。
『ほにゃらら、らら。その日、二つの塔倒れる』
『地が揺れ、高き水至る』
こんな感じかしらね~。
あ、スマートフォンの隆盛なども書いてみようかしら。
『魔法の板現る』
これで良しと。
結局は具体的な数字を入れなければいいのよ。ノストラダムスは1999なんて言ってしまったから、西暦1999年ではないかと思われてしまったわけで。
数字さえ入れなければ、後から読む人が適当につじつまを合わせるでしょ。
……しかし、こうなってくるとメンタリストと変わらないわね。
曖昧模糊なことを言っているととりあえず占いとしてはOK、的な。
うーん。
これだと、外れないから失墜はないけど、マイナー予言者の域を出ない気もするわ。そもそも知られなければ失墜しないだろ、的な。
これではダメだわ。
やはりどこかで大胆に勝負をかける必要はあるわ。
人類へのインパクトが抜群で、かつ的中して「ノストラダムスは凄い。女神のようだ」と思わせる何かが必要になるわ。
うーん。
ハッ!
閃いた!
これよ、これを入れれば、人類は永遠に私を崇め奉るに違いないわ!
予言集への記載が終わったわ。
終わったから、自分の死を予言しておいてさっさと天界に帰ることにしましょう。
『監禁同様の王から贈られた大使職をしりぞいて、彼は無為に天に召されるだろう。近親者と血盟の友全てが、寝台とベンチの間で死んでいる彼を見つけるだろう』
未来で私がどう扱われているか、楽しみね!
"みんなの総括"
「こんちゃー。天成だけど、また死んできましたー」
「いらっしゃい、奥洲天成。転生に来たのね?」
「あれ、あんたは新居千瑛? 女神は?」
「女神は転生した世界を滅ぼしてしまって、罰走三万周を課せられているわ」
「えっ、世界を滅ぼしたって……。あいつ、一体何をやったの?」
"17世紀フランス"
「私はピエール・ド・フェルマー。裁判官にして在野の数学者だ。色々文献漁りを楽しんでいる。本日、友人が勧めるノストラダムスなる予言者の本を読むが……。むむっ? こ、これは!」
E=mc²
「……何というとんでもないことを予言しているのだ、この男は!」
「フェルマーは大いに相対性理論の研究を進めて、最終定理を二つ残したのよ。それを受けたアイザック・ニュートンが原子力や重力理論にたどりつき、20世紀半ばには人類は途方もないテクノロジーを築いたのだけど、世界戦争が起きてしまって、1999年7月に某国軍が地球をも飲み込むブラックホールを作り出し、人類も世界も重力の深淵へと消えてしまったのよ」
「マジか……」
「その後の私達の調査で、実はノストラダムス本人も相対性理論を予言していたのだけど、相対性理論を書いたページだけが抜き去られていたらしいわ」
「……ということは」
「彼の予言が全て伝わっていれば、1999年7月に世界が滅ぶというのは本当だったのでしょう……という陰謀論なんかがあるかもしれないわね」
「そんな馬鹿な」
「真実は神のみぞ知るところよ。神と言っても、あの女神ではなさそうだけど……」
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