第127話 失墜を避けよ ~ ミシェル・ノストラダムスに転生しました・前編

 私はこの天界を統べる女神。


 中世世界の時空は私の手によって支配され、全て私の意のままに動いているのよ!

 私こそ、この世界の頂点なのよ! ひれ伏しなさい!



『中世の女神よ。最近、色々と失態が続いているようだな』

『申し訳ございません』


 何で、私がひれ伏さないといけないのよ。

 サラリーゴッドは辛いわ……。


『全てあの悪しき幽霊めが、天界をも超える力を手に入れたせいで……』

『しかも、最近遊びすぎのようだと報告を受けている』

『そ、そのようなことはありません!』

『転生作業を航空機任せにし、テレビばかり見ているという報告もある』

『そ、そんなこと……はあります』

『罰として一度転生してこい』

『ひえぇっ!? ご、ご容赦を!』

『ダメだ。ミシェル・ノストラダムスに転生して、反省してこい!』


 ノストラダムス!?

 あの大預言者として知られていたノストラダムスね。

 ただ、1999年7月に世界が滅亡するという予言がモノの見事に外れて、今では完全にイカサマ師扱いされているけれど。


 というか、待ってちょうだいよ。

 ノストラダムスって、本人が死んでから有名になって、勝手に失墜してしまっているじゃない。

 本人は変な文集書いた以外はあまり知られていないわけで、勝利も負けもないんじゃないかしら。


 それでも勝利条件を考えるなら、1999年以降も正しく予言しつづける、ということだけど、キリがないような気がするんだけど。

 マヤは別に滅亡するなんて書いてないけど、「ここで周期が切れる! つまり、ここで滅亡するのだ!」なんて勝手に解釈されたし。


 そもそも、ノストラダムスが何を考えて書いていたのかも分からないし、後づけで色々解釈されただけで。


『何をブツブツ言っている? 何なら唐の中宗にでも転生するか』

『ヒィィィィッ! 唐の中宗は勘弁してください! 分かりました! ノストラダムスに転生してきます!』


 唐の中宗はダメよ。

 あんなのに転生させられたら、私の女神としての権威に傷がついてしまうわ!


『最近、頭に乗っている転生者も多いと聞く。見事、ノストラダムスへの転生を成し遂げ、神の権威というものを示すのだ!』

『ハハーッ!』


 もう決定事項になってしまったわ。

 仕方ない、ノストラダムスなら変な生き方はしていないし、予言失敗なんて後の連中の責任なんだから、適当にやってしまいましょ。



"千瑛ちゃんの一言"

「……あれに権威なんてあったの?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る