第122話 南宋決戦④ ~ 王氏に転生しました・中編
特別機で北宋末期に転生したワタクシは王仲岏の娘として生まれました。
我が王一族は名門です。祖父の王珪は神宗時代の宰相で、その繋がりで上流階級には知り合いが一杯です。
ワタクシの名づけ親も大物です。
「童貫様、お願いいたします」
「あら~、可愛い子ねぇ。宦官でないのが残念だワン♡」
……。
どうしてでしょう、生まれた瞬間から絶体絶命感が半端ないのですが……
ともあれ。
名付け親がいるはずですが、ワタクシの実名は伝わっておりません(北条政子も親が時政なので政子となっています。この時代の女の名前は適当ですわ)。
ですので、便宜上郁子ということにしておきましょう。
「郁子よ、私は四男なので、超上流の繋がりをもつことはできない。結婚相手はどうしようかな?」
「うーむ……」
本来なら、秦檜を選べば解決ですが、どうも宮廷の実力者童貫の動向が不穏です。
というか、あいつ、絶対鄭和の生まれ変わりですわね。一体、何をするつもりなのでしょう?
鄭和の動向が気になりますが、あいつは宦官のための世界を目指すとしても、まともな男子を優先することはないでしょう。
となると、正史通りの展開に引き込めば勝ちですので、そのまま秦檜と結婚するのが利口でしょう。
秦檜は優秀な男ですので、科挙にも受かり、前途有望に見えました。
そんな折に金が攻め込んできたのです。
北宋の軍権は鄭和……じゃなくて童貫が握っていましたが、あろうことかあの男……じゃなかった宦官は金に降伏して、山東省のあたりに自分の国を作り始めてしまいましたわ!
これが狙いでしたのね! 中国で宦官の国を作ろうとするとは、どこまで傲岸不遜な男なのでしょう!
しかし、童貫より強い者がいないのが北宋の現状です。
北宋はあっさりと都を落とされました。
金の連中は「我々、金に従うか? あるいは童貫の斉に従うか。決めろ」と圧迫をかけてきます。
そこに毅然と刃向かったのが我が夫秦檜ですわ!
「どちらの支配も受けぬ! 宋は滅びぬ! 何度でも蘇るさ!」
当たり前ですが、金の面々は激怒しました。
「それならば、北に連れ帰って教育してくれるわ! 自己批判するがいい!」
「ああっ! (出世の)芽が! 芽が~!」
ワタクシ達は金に連れ去られることになりました。現在では都となっている北京ですが、この時代は辺境中の辺境です。こんな寒々としたところで人生を終えることになるのでしょうか?
金の宮廷にいて伝わってくるのは、斉にいる童貫が宦官の国家を順調に作り上げているという話だけです。
ついでに宋の残党は南に逃げて南宋を作ったようです。
ワタクシ達夫婦どころか、宿敵となる岳飛天成まで含めて完全に置いて行かれたような気がするのですが、これで良いのでしょうか?
あと、あの幽霊はどこで何をしているのでしょうか?
"女神の一言"
『その頃、新居千瑛は……?』
「オギャア! オギャア!」
あら、私の人生は南宋のスタートとともに始まるのね。
生年までは知らなかったわ。
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