第121話 南宋決戦③ ~ 岳飛に転生しました・中編
紆余曲折はありつつ、俺は12世紀の中国に転生した。
いや、待てよ。航空機は11世紀後半と言っていたな。
ということは、11世紀後半に転生した連中もいたということか。
偶々かもしれないが、この時代には郁子だけでなく、新居千瑛と鄭和も転生している可能性がある。
注意してかかる必要があるだろう。
時は南宋ではなく、北宋末期だ。
北宋という国は契丹族の遼にずっと圧迫されていた。
ところがこの時代、遼の北に女真族の金という勢力が現れた。金は遼を攻撃し、北宋に対して「一緒に遼を攻撃しようじゃないか」ともちかけた。
北宋は遼に対して長らく恨みがあったので、これに応じることにした。総大将は
しかし、童貫は遼を滅亡させたものの、その後、金に降伏して、かえって宋に攻めてきた。
……あれ?
この時、童貫はヘマをしたが、金に裏切るなんてことはなかったはずだが……。
宋は商業国家で栄えたが、軍が強いわけではない。
おまけに軍の大黒柱である童貫が裏切っては勝てるはずがない。
皇帝・徽宗は金に捕まり、金に送られた。
金は瞬く間に中国北部を占領した。
ただ、そのまま南に攻め込むことは躊躇した。三国志などを見ていれば分かると思うが、中国北部は騎馬が駆け巡るところだが、南側は船で移動するところだからな。
南に逃げた宋は南宋を建国して、抵抗の意思を示した。
これに対して、金は、自分達が占領した地域を別の国に作ることで、宋の連中に「金は別の国まで作った。金に勝つのは難しい」と思わせようとした。
作られた国は、斉。皇帝は童貫だ。
あの野郎、宦官のくせに皇帝になるとは……。
いや、やっぱりおかしいぞ。
史実で斉の皇帝になったのは
童貫はとっくに死んでいるはずなのだが……
斉は宦官の国を銘打って、南宋の宦官に自分の国に来るように呼び掛けた。
これに多くの宦官が応じてしまい、南宋は宦官がいなくなった。
宦官がいないと、皇帝の後宮やら家庭内のことが管理できない。南宋は建国直後から正念場を迎えることになった。
そんな中で俺は育った。
俺の家は豪農だ。地域の有力者だった。
父は早逝したが、母は自分達一家に自信があり、「宋が健在なら、岳家は永遠に安泰だよ」と俺に言って聞かせて、兄弟の背中に『尽忠報国』の刺青を刻んだ。
現代であればかなり問題ある母親だが、当時は宋に忠誠を尽くそうという層は多かった。だから、俺の背中に燦然と輝く刺青は、周囲に「あいつは宋のために死ぬ男だ」と思わせ、人気者となった。
ただ、裕福な岳家はともかく、周囲の貧乏人は次々と息子達を宦官に取られてしまった。斉がものすごい勢いで宦官を採用していったからだ。
恐ろしい国だ、斉。
毎年のように万単位で宦官を引き抜いていき、建国直後の南宋産業を破壊しようとするとは……
ただ、25歳になる頃、俺は気づいた。
いや、宦官が取られたからといって、貧乏人を宦官にして補充しようとする南宋もおかしいんではないか?
この国は間違っている。
俺がこの国を正さなければならない。
この背中に燦然と輝く『尽忠報国』の刺青に賭けて!
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