第118話 ホスロー2世に転生しました・終章
614年、ヘラクレイオスの忠臣テオドロス・トリシリウス率いるビザンツ軍がアラブまで攻め込んでいった。
この時代なら、まだムハンマドの勢力はたいしたことがないし、ハーリド・イブン・アル・ワリードに至ってはガキンチョだ。
期待しているぞ!
しかし、一年もすると「成果は上がった」とか言って戻ってきた。
……こいつら、攻めてないんじゃないか?
砂漠の奥まで行きたくないから、さっさと帰ってきたんじゃないだろうか?
成果があるなら何か証拠となるものがあるのかと聞いても、特に何も提示してこない。
どうやら、これはクロだ。
ビザンツの奴らめ、俺を裏切るとどうなるか、目に物を見せてやる!
俺はアラブ人と交渉することにした。
「ビザンツを共同作戦で叩こうじゃないか」
イスラムにエジプトを叩かせて、俺達は東欧とコーカサスを攻めてコンスタンティノープルを孤立化し、最終的には叩き落すという算段だ。
アラブ人も了承した。
早速、サーサーン朝は軍を出した。俺は中央のシリア方面への軍を出し、北にはモブ将軍、南はモブ将軍とイスラムに任せることとする。
この当時のシリアは肥沃な大地だから(58話参照)、ビザンツも見捨てるわけにはいかない。ヘラクレイオスめ、軍を出してきた。
「相手はアラブ人にも勝てないビザンツだ! 恐れることはない!」
俺の激が効いて、サーサーン朝は勝利した。
そのまま西へと攻め込み、アッと言うまにコンスタンティノープルを包囲する。
北の方も順調なようだ。南はアラブ人がイマイチ協力的ではないようで、進行が遅れているようだが、まあ、仕方あるまい。
攻撃を続けていると、城壁にヘラクレイオスが現れた。
「何故、ビザンツを攻めるのです!? 我々はきちんと約束を守ってアラブに攻め込んだというのに!」
「嘘をつくな! アラブはピンピンしているし、おまえたちが攻め込んだ証拠は何も貰っていないぞ!」
「いや、ですから、我々は惨敗したんですってば! 負けた証拠なんか恥ずかしくて出せないですよ!」
「何だと……?」
負けただと?
イスラムはそんなに強かったのか?
というか、アラブ人達は、ビザンツに勝ったなんて一言も言っていなかったぞ。
嫌な予感がした。
突然、東から急使がやってきた。
「大変でございます! ラフム朝が攻め込んで参りました!」
「何ぃ!?」
「どうやら、アラブ人の宗教に改宗したようです! しかも、テーシフォンにいる皇太子殿下(カワード2世)が反旗を翻しました!」
「ど、ど、どういうことだ!?」
「多分、中央集権が酷すぎて今のままだとそのうち粛清されると思ったのでは……?」
「貴様ぁ、急使のくせに偉そうに解説ポジにつくな! 処刑せよ!」
「えぇぇ!?」
俺は急使を処刑して、憂さを晴らしたが、事態は改善しない。
俺はコンスタンティノープルまで攻めているから、おいそれと退却も出来ない。
だが、ここにいたままでは釘付けにされたまま、別の軍から攻撃される可能性が大だ。
仕方ない。ビザンツと講和するしかない。
俺はヘラクレイオスに呼びかけた。
「ヘラクレイオス、俺の誤解だった。悪かったな。和解しよう」
「冗談じゃない! 僕もシリアの面々も激おこだ! もうすぐハーリド・イブン・アル・ワリードが来るから、それまでここにいるんだな!」
「何ぃ!?」
ハーリド・イブン・アル・ワリードがもう始動しているだと!?
あいつはムハンマドよりもヤバい奴だ。
あいつと戦ったら負ける。生存するためには奴と出くわさないのが大切だ。
畜生、多少の犠牲を覚悟で撤退するしかないか。
俺は夜陰に紛れて、撤退することにした。
「ここまで来れば大丈夫だろう」
ようやくシリアを抜け、ユーフラテス川を越えたあたりで。
「うわぁ!」
近衛兵達が矢に打たれて、次々と倒れていく。
「何だと!?」
前進しつつ、振り返った先には……
『コード識別……IRN358……えーらーん・しゃふるノコノエヘイオヨビほすろーニセイ。スベテ、イスラームノテキ、ハイジョキノウ……オン!』
「ハ、ハ、ハーリド・イブン・アル・ワリード!」
"女神の総括"
『やられちゃったわねー』
「くっそぉぉ、ハーリドの奴、ビザンツ軍壊滅させて、撤退中とはいえサーサーン朝軍も全滅させるとか強すぎだろ」
『それはまあ、アッラーの剣なわけだし。でも、何で今回に限って、郁子ちゃん並に独裁やったわけ? あんなんやったら、周囲がビクついて謀反必須になるものなのに……』
「たまに掃除とか始めると徹底的に綺麗にしたくなるだろ? 中途半端にゴミ残したまま終わりたくないじゃないか」
『断捨離やっていたら、ノリノリになってきて必要そうなものでも、「ま、いいだろ」とどんどん捨てだす感じの話なわけね』
「まあ、そんなところだ……」
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