第117話 ホスロー2世に転生しました・後編
600年、サーサーン朝の中央集権は頂点に達した。
すなわち、何かしでかしそうな奴を全て、俺の手で倒したのだ!
俺のみがこの大帝国を動かすのだ!
ただ、俺は史実ほど理性を失うことはない。
史実のホスロー2世は、アラブ人の防波堤となっていたラフム朝を気まぐれに滅ぼした。気まぐれと言うと大げさだが、キリスト教的な解釈の違いからぶっ潰してしまったのだ。
いや、サーサーン朝はゾロアスター教じゃないのか、と思った貴方、正しい。
ただし、この俺はビザンツに亡命していた時期もある。だから、キリストの影響も強いのだ。
もちろん、このラフム朝をぶっ潰したのは大失敗だ。後にイスラム勢力がサーサーン朝に攻め込んできた時、彼らがいなくなったから易々と入ってくることになったのだからな。
だから、ラフム朝はそのままに次のステップに向かう。
ビザンツとの戦いだ。
いや、おまえ、ビザンツに助けてもらったんじゃないの?
恩知らずなのではないかと思った人がいるならば、それは正しくもあり、間違ってもいる。
何故なら、少し前まではサーサーン朝が大混乱だったが、今度はビザンツが大混乱に陥るからだ。将軍フォカスが反乱を起こして、俺が世話になった皇帝マウリキウス一族を処刑した。そのままフォカスが皇帝となったのだ。
史実の俺は、「ちょうどいいじゃん。ビザンツも俺のものにしてしまおう」と全力でビザンツとの戦闘に乗り出した。
ただ、さすがにそれは早計というものだ。
この後、ビザンツには名将ヘラクレイオスが現れる。結果的にはヘラクレイオスと消耗戦を演じることになって、サーサーン朝は急激に衰えていった。
だから、俺はまず「フォカスをビザンツ皇帝とは認めない」という立場を鮮明にし、場合によっては介入することを宣言する。
ほら見ろ、ヘラクレイオスらが俺にすり寄ってきた。
もちろん協力しよう。ただし、条件を出す。
「アラブ地域が不穏だ。フォカスをぶっ殺した後は、協力してアラブを叩こう」
「……アラブを?」
ヘラクレイオス一派は不思議がったが、サーサーン朝の援軍は喉から手が出るほど欲しいから受け入れるしかない。
俺はヘラクレイオスを援軍し、皇帝とさせることに成功した。
これで俺は恩人だったマウリキウスの仇を討ったことになるし、ヘラクレイオスに大いに恩を売った。
「何だかよく分からんけど」
と、ビザンツは俺達の要請に応じて、アラブに攻め込んでいった。
しめしめ。
これで、ビザンツがアラブをぶっ倒せば、アラブはビザンツを恨む。
ひょっとしたら、ムハンマドやハーリド・イブン・アル・ワリードがこちらの配下になるかもしれない。
もちろん、アラブがビザンツ相手に善戦したら、弱ったビザンツをサーサーン朝がぶっ潰すまでだ。
どちらに転んでも、俺は得をする。
歴史の勝者は、間違いなくこの俺!
ホスロー・アパルヴェーズなのだ!
"女神の一言"
『うーむ、今回は悪どいわねぇ。悪どすぎるわ。第四話に続く!』
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