第110話 徳川家光に転生しました・後編
宦官を導入したらどうか。
アタシの提案に、老中や春日局が顔を見合わせることになったワ。
「確かに大陸の方には、そのような風習がありますが、古来より我が国には宦官はいなかったのであり……」
「だが、過去にいなかったからという理由だけで拒むものでもないかもしれない」
議論は紛糾したワ。
だけど、結論は決まっているのヨ。
だって、征夷大将軍であるアタシが望んでいるのだから。
最強の将軍に歯向かえる者はいないワ♪
「導入については決まりましたが、誰を宦官にするか、また議論が平行線です」
まぁ、これはやむをえないわ。
いきなり「宦官になる人いませんか?」なんて言われて、「はい」と応じるのは難しいものネ。
日本人は手を挙げたがらないところがあるから尚更だわ。
放置しておくと、いつまで経っても決まりそうにないし、ここはアタシが主導権を握るしかないわね。
「寺で不徳なことをしている僧侶がいいワ」
今も、昔も、洋の東西を問わず聖職者なるところには清らかな少年少女が揃うワ。
そうなると、欲望を押さえつけられない不埒ものが大勢出てくるものヨ。
そういう不埒者を優先的に捕まえていくしかないわネ。
案の定、坊主たちは大騒ぎを始めたわ。
「上様は宗教弾圧を考えている」などと騒ぎ始めたけど、どれだけ稚児が好きなのかしらという話ね。
「煩悩を抑えきれないなら、切ってしまいなさぁい♡」
こうして、大奥が整い、宦官も揃ったワ♪
え、そんなに出費をして大丈夫なのかって?
大丈夫ヨン。
アタシは遠征OKに領地経営OK、海外交易OKの超有能宦官なのよ。
天界で得た知識も加えて、利ザヤをあげるなんて訳ないワ。
大奥を整える過程で、息子や娘を大名家に養子で出したり、政略結婚したりして、徳川家の権力も更に固まったワ。
これで盤石、と思っていたのだけど。
「上様、一つ問題が」
「どうしたの? 伊豆(松平信綱)」
「最近、浪人共が不穏な動きを見せています」
「あら~、正史よりも経済が良くなって、浪人の生活も良くなったはずなんだけどネ~。アタシの子供が大勢いるから継嗣断絶も少なくなっているのにネ」
「
由井正雪!
あのおかっぱ頭なんて、まるで宦官になるために生まれてきたような恰好なのに、何でアタシに歯向かうのかしら?
「仕方ないわね。正雪をひっとらえて、宦官にしなさい」
「分かりました」
これで浪人問題は解決ネ。
ただ、あまり増えると厄介だから、末期養子も多少緩和しておこうかしら。
「上様、今度はキリシタン共が島原で不穏な動きを見せております」
「仏教僧を沢山宦官にしているのに何が不安なのかしら?」
「
天草四郎!
彼はほとんど男の娘なんだから、宦官になるべきよ!
「天草四郎もひっとらえて宦官にしなさい。代わりに切支丹の無条件処刑は緩和よ。名乗り上げた連中はマニラ追放で済ませなさい」
「分かりました」
こうして、アタシはアメとムチを使ってうまく治め続けたワ。
そして、80歳で大往生を遂げた時、日本の宦官は400人まで増えていたノ。
この後、日本がどうなるか、楽しみネ♡
"女神の総括"
『鄭和さん。そこで土下座してもらおうかしら……』
「あ、アタシが悪いわけじゃないのよ~」
『あんたが僧侶業界を徹底浄化した結果、子孫達も何かある度、宗教界を宦官にしまくって。結果、仏教も神道も勢力激減してしまったわ』
「だから儒教も入ってきちゃって、幕末で一回キリストになったけど、その後欧米と対立して、いつの間にかイスラムになっちゃったわネ♡ アタシはムスリムだから問題ないけど」
『日本をイスラム化させるなんて離れ業を見たのは初めてよ……』
「天皇制度は宗教的指導者的性質も帯びているから、カリフと親和性があるワ。時間にうるさいイスラムの戒律も、日本人には向いているのよネ。あと、イスラムは少子化にも強いから、21世紀も問題ないワネ」
『代わりにアニメもゲームも全く無しで、こんな話書いたら、即摘発ね』
「あちら立てば、こちらが立たずよねぇ」
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