第109話 徳川家光に転生しました・中編

 アタシは徳川家光として転生したワ。幼名は竹千代ネ。


「おぉ、竹千代よ。可愛いのう」


 アタシを撫でているのが、徳川幕府初代将軍の家康ヨ。すっかり好々爺という感じネ。


「父上、竹千代だけでなく国松も可愛がってくだされ」


 だけど、父の徳川秀忠は弟を買っていて、アタシのことが嫌いみたい。

 この人は「この役立たずめ」と何度も家康から罵倒されていたから、何もしないのに可愛がられているアタシのことを憎いと思っているのヨ。


 でも、後継者の座は揺るがないワ。

 秀忠も諦めて、アタシに将軍位を譲ってくれたのヨ。


 ここまでは基本的にそのままね。イージーゴーイングな人生ヨ。


 さて、将軍に就任したアタシは諸大名を集めて宣言したワ。

「アタシは生まれながらの将軍なのヨン! 文句がある奴は今すぐ国に戻り、戦の準備をしてチョウダイ!」


 アタシは海軍指揮官としては世界最高クラスよ。だから、全外様大名が敵に回っても余裕のヨッチャンで戦えるのヨ。


 意見する者は一人もいなかったワ。

 皆、アタシの威厳にぶるってしまったようね。


「それでは、所信表明も行うわヨン♪ まず大切なのは組織の中でいさかいをなくすこと。組織のいさかいは、つまらない見栄もあるけど、80パーセント以上は相続の失敗から起きているワ。これを摘み取るのヨ」


 アタシは、家督継承者の選び方について宣言したワ。


 後継者の選び方については色々な方法があってそれぞれ一長一短だけど、隣のしんのスタイルが一番いいと思うのヨネ。

 つまり、家長は後継者の名前を記したものを秘密の場所に保管する。家長が死んだ後、それを開示して書かれてあった者が後継者になるのヨ。後継者候補が馬鹿なら変えればいいし、変えられるかもしれないからみんな頑張るだろうからネ。


 更に、妻を公募する旨も宣言したワ。

 こうすることで、諸大名が身内の娘を勧めてくるワ。

 それだけでも結構な数になるから、大奥を拡大する必要がある。


「これだけ大奥が大きくなると、女だけでは管理しきれないわネ」

「そんなことはありません。私が運営してみせます」

 春日局は反対したけど、実際に各大名家からは娘だけでなく、その世話役も送られてくるから相当な人数になったワ。

「え、江戸城がもう一つ必要かもしれませんね」

「そうね。これを管理するには女だけでは足りないワ」

「で、ですが、男を入れると厄介な問題が生じるかもしれません」

 さすがに春日局はアタシの理解者だわ。その言葉を待っていたノ。


「そうね。だから、宦官ヨ」



"天界控室"

『あいつ、本当にぶれないわね……』

「ついに日本に宦官が導入されてしまいますわ」

「一体どうなるんだ? 想像もつかんぞ。そもそも四代将軍からして家綱でなくなるかもしれん」

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