第106話 陳硯真に転生しました・中編
7世紀の唐にやってまいりましたわ!
大唐と呼ばれた唐帝国ですが、その序盤はまだまだ隋末からの混乱が残っている時代でしたわ。
唐の太宗・李世民は名君の象徴のように語られている人物ではありますが、実際には彼の時代もまだまだ回復途上の状況にありました。
途上ということは、まだまだ問題も多いということです。
ワタクシの生まれた浙江省の杭州近郊は大運河の終点にあたる場所でした。
ですので、煬帝が大運河を作って以降、発展していたのですが、発展したために税収源の場所とされてしまい、一帯が増税されました。
このため、運河の恩恵にあずかれない場所は、収入は増えないけど税金は増えるという悲惨な状態になり、ワタクシと妹は悲惨な暮らしを過ごすことになったのですわ。
寒いですわ、ひもじいですわ。
しかし、かつて経験したことがある辛さ、耐えてみせますことよ!
※メアリー・スチュアートに転生しました参照
このような状況が続く中、陳硯真は道教の知識を持ち出して『私は妖術を極めた』とか言って反乱を起こしたそうです。
三国志に出て来る張角の女性版ですが、張角にしても太平道という組織を築いて広域活動をしていましたが、失敗しました。
陳硯真はそこまでしっかりした組織を作っていません。それでは3ヶ月程度でぽしゃるのが関の山でしょう。
甘い、甘すぎますわ。シュガー!
作戦を変える必要がありますわ。
今の政治が悪い場合、民衆は大抵、今の政治家によって虐げられた者に同情する傾向がありますわ。
そして、太宗・高宗時代であれば、そうした虐げられた者は大勢おります。
まず、太宗によって暗殺された兄の李建成と弟の李元吉を持ち出すというのは有用な手ですわ。
特に李建成は本来であれば唐の皇帝となるべき存在。この者を騙ることによって、「兄を暗殺したような皇帝を認めていいのか」と現皇帝の正当性を揺るがせるのは大きいですわね。
また、高宗の兄である李承乾や李泰の名前を騙るのもアリですわ。
彼ら二人は互いに太宗の次を争い、喧嘩両成敗で揃って退けられてしまいました。結果として大人しい李治が高宗となったのですわ。
そこまでは問題ないのですが、喧嘩両成敗で退けられた二人がそろって早逝しているのですわ。これは結構怪しいですわ。
高宗が後の則天武后である武照を抱えたことも一つの手として使えそうですわ。
と言いますのも、武照は元来太宗の妻女となるべき女でした。それを息子の高宗がそのままいただいて自分の妻としたのです。
唐の皇室は、鮮卑系だったというのが現在の通説です。匈奴の時代から遊牧民族の指導者は、相続時に母親以外の父親の妻をそっくりいただくので、彼ら的には不思議な話ではありません。
ただ、漢民族としてみれば、これは面白くない話ということになるでしょう。
以上を操作して、以下のような形で反乱を起こすとしましょう。
皇太子・李建成は実は生きていて浙江に流れ着いていた。
現在の皇帝は、本来の皇帝・李建成を無視した偽物であり、しかも二人の兄を暗殺し、父親の妻女を自分のものにするなど風紀紊乱も著しい。
よって、唐の皇室には先がない。
正しい皇帝である自分についてくるのだ。
完璧ですわね!
……あ、いや、完璧ではないですわ。
これだとワタクシが不要になってしまいます。
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