第99話 ジャンヌ・ダルクに転生しました・結末
ということで、まずはオルレアンを解放して、連戦連勝を飾ったわ。
で、慌てたイングランドは停戦を求めて、フランスもこれに応じたわ。
史実のジャンヌはとことん主戦派だったけれど、それを続けたら結末も同じになるわ。
だから、主戦派の旗は降ろすしかないわね。
その代わりに功労金をせしめることにするわよ。
「こ、功労金ですか? 私は神の声を聞いてフランスのために立ち上がったんですよ。それなのに金で手を打つのは情けなくないですか……?」
「任せなさい。ものは言いようよ」
私は何人かの部下を使って、シャルル周辺に「ジャンヌは停戦には不満のようですが、一方で寺院の修繕のための寄付をしたいと考えているようです。彼女にそのための金を渡して大人しくさせるのはどうでしょう?」と噂を撒かせたの。
ここは私の特殊な立ち位置がモノを言ったわね。
私が「停戦したらフランスは負ける」なんて予言めいて言い出したらシャルルにとっては面倒なことになるから、不承不承金を出してきたわ。
それだけでは足りないから、私を信用している面々にもお金を融資してもらうことにしたわ。
リッシュモンやジル・ド・レからも資金を貰って、私はハンブルクに向かったわ。
「何をするんですか?」
「もちろん、船を造らせるのよ」
「船?」
「えぇ。西に行って、新しい大陸で『神の国』を打ち立てるのよ」
「えぇぇ!?」
「何を驚いているの? この世界に残っていたら生存率は0.02パーセントよ。だったら、新しい世界に行った方が賢いに決まっているじゃない」
「前話の0.02パーセントって、そういう意味だったんですか!?」
「モーゼは神に教えられてエジプトを出たというわ。私は神に教えられてヨーロッパを出るのよ」
「絶対、神に教えられていないですよね!?」
「いいえ、知識と計算という神に導かれているわ」
こうして私は、準備万端整えて、ドイツで色々な面々に呼びかけることにしたわ。
ドイツではまだ十字軍の機運が微かに残っていて、そういう人達を連れていくことにしたのよ。
不毛な戦いをするよりは、西に向かう方が余程十字軍らしいしね。
更にフス派にも声をかけることにしたわ。
史実のジャンヌは、フス派に対して「貴方達の信仰は間違っています。カトリックこそ全てです」とか文句を言っていたらしいけれど、私はそんな不毛なことは言わないわ。「西からだってイェルサレムに行ける。信仰はイェルサレムにあるのよ」と主張したのよ。
もちろん、イェルサレムに行く気は全くないけどね。
こうして、史実では火刑に処された1431年、集まった連中をロングシップに乗せて、大西洋へ漕ぎだしたのよ。
"女神の総括"
『で、アイスランドからグリーンランドまで行って、あとは陸伝いにニューファンドランド、アメリカ東岸を経て、メキシコまで到達したわけね……』
「ヴァイキングがグリーンランドに作った入植地が消滅寸前で、彼らの拠点をタダで利用できたのは良かったわ。もちろん、イヌイットとは仲良くしてアザラシを分けてもらったのよ。寒いところではイヌイット流に従うべきなのは、20世紀初頭に南極で証明されたことだものね。アムンセンは偉大だわ」
『アステカまで行っても中米の土地や出来事を言い当てて予言者としてもてはやされて、晩年にはコロンブス襲来も予言して撃退……。ヨーロッパ人同士で何をやっているのよ』
「コロンブスは金を目当てにやってきたのよ。そんな愚か者を神の国に入れるわけにはいかないわ」
『神の国じゃないでしょうが。で、天寿を全うした後、中米方面の転生航空機を乗っ取って戻ってきた、と……』
「定員オーバーだったから、二人置いてきたの。悪いけど、もう一機派遣してちょうだい」
『気軽に言うな! あんたのせいで何枚始末書書かされたと思っているの?』
「もう慣れたでしょ? 十枚でも百枚でも書けるわよ」
『……はぁ、泣きたくなるわ』
「あと、15世紀のヨーロッパ便を二千年止めるように指示を出していたでしょ? 信じられないわ。そんなことをしたらジャンヌの亡霊が帰れなくなるじゃない。何でそんな可哀相なことをするのかしら」
『誰のせいだと思っているんだー!』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます