第90話 天才を倒せ~ダーラヤワウシュ3世に転生しました・前編

 俺の名前は奥洲天成。


 凄腕の転生士だ。

 しばらく前までは、という留保がつくが。


 一時期、俺は連戦連勝とは行かないまでも、かなり勝ち筋に近い局面を得ることができた。

 それが最近はどうだ。

 そもそも、最初から詰んでいるとか、実は何をやっても無駄だったみたいなケースばかりだ。


 こういうのはツマラナイ。

 段々、やる気をなくしてきてしまった……。


『そんなモチベーション不足のテンセイにジャジャーン! 激ムズだけど、やりがいのある転生先があるわ!』

「女神か……。一体、何をやれというんだ?」

『今回の転生先は中世じゃなくて古代だけど、ミッションは、世界史第一の天才を打ち破れ!』

「世界史第一の天才を破る? 一体、誰のことなんだ?」

『転生先はハカーマニシュ朝のダーラヤワウシュ3世! 英語読みだとアケメネス朝のダレイオス3世よ!』

「ダーラヤワウシュ3世!?」


 というと、アレクサンドロス(アレクサンダー)大王と戦って、負けたペルシア皇帝か。


『そうよ! 上半身裸の厚ぼったい唇で、関俊彦さんの声で「俺は、神だ」とか言うアレクサンダー大王よ』

 どこのアレクサンダーやねん。

 それだったら、俺は山寺宏一さんがやっていた役ということになるじゃないか。


 それはさておき。


 ダレイオス3世は、アレクサンダーとグラニコス川、イッソス、ガウガメラで戦い、いずれも兵力では優勢だったという。

 正確な人数は分からないが、アレクサンドロスのマケドニア軍は三万くらいで、ハカーマニシュ朝軍は少なくて10万、多い資料だと30万とか60万だという話だったからな。

 さすがに30万60万はないだろうが、とにかく相手の倍以上の軍がいた可能性はかなり高い。


 しかし、それでも三回ともコテンパンにやられてしまった。


 何故か。

 ペルシアもダメだったのだろうが、やはりアレクサンドロスが強すぎたということなのだろう。


『そういうこと。今回はシチュエーションは簡単で、とにかく相手がチートということなのよ』

「なるほど……」

『アレクサンドロスを倒せるか、否か。簡単でしょ?』

「簡単ではあるが、とにかく難しそうだな」


 世界最強クラスの相手と戦うというのは面白いのかもしれない。

 できるのか、どうか……。

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