第94話 袁崇煥に転生しました・中編
何ということだ!
吾輩は一方的に袁崇煥に転生させられることを決定されてしまった!
処刑されるなどまっぴらだ!
だから、そうならないために勉強することにした!
吾輩は資料室に籠り、転生先の資料を揃えるだけ揃えさせた。
図書館に籠って資料を読み漁るのは吾輩の得意技。
袁崇煥の人生を分析し、研究し、処刑されることを回避するのだ!
しかし、あの残忍な娘は、たった二日で吾輩をまた呼び出した。
『そろそろ行ってもらうけど、勝算はありそう?』
「……何とかなるかもしれないが、一つ大きな問題がある!」
『何なのよ?』
「吾輩は戦争や現場指揮はからきしダメだ! 吾輩は頭でっかちの理論家だから、現場で戦うことはできない! だから助っ人としてフリードリヒを連れて行きたい!」
『さっさと行ってこーい!』
うわ~~!
吾輩、娘の回し蹴りを食らって、17世紀の明の時代まで飛ばされてしまった!
17世紀、時代は明末だ。
吾輩は今、袁崇煥として科挙なる中国式入試に挑んでいる。
この時代の中国では、科挙に受かるか受からないかが人生の分かれ目だ。
受かれば残りの人生はウハウハ。
ダメなら、負け組といっていい人生を歩むことになる。
この点に関しては問題ない。
試験勉強的なことならば、吾輩は世界史上でもトップクラスだ。
吾輩の答案は圧倒的な力を示し、当然のように科挙に受かった。
問題はここからだ。
吾輩は革命理論を推し進めたいが、中国においてそんなことを口にすれば即、処刑されてしまう。
ここは雌伏するしかない。
それ以前にこの時代、明は悲惨なことになっていた。
少し前まで、日本と喧嘩をしていた(豊臣秀吉の朝鮮出兵)し、南では大規模な反乱は起きるし、おまけに東北部では女真族のヌルハチが活動を始めていた。
吾輩は、この女真族のヌルハチを何とかするようにという命令を受け、遼東に向かうことになった。
三国志のゲームで、公孫なんとかばかりいる地域だ。
しかし、着いてみると全くやる気のない奴らばかりだ。
公孫一族も微妙だが、ここにいる連中はもっと使えない。
嘆かわしい。
これこそまさに、ブルジョワジーに搾取されつくした労働者の成れの果てだ。
中国は知的特権層が強すぎ、その他の者には持ちうるものがない。
だから、彼らは兵士として労働力のみならず命までをも搾取されてしまう。
この状態を打破するためには革命が必要だ。
そう、革命が!
と思っていたら、吾輩の先輩である
地元兵には郷土愛があるので、やる気がまるで違う。
軍の編成という小さなレベルではあるが、革命が起きた。
やはり世界には革命が必要だ。
※女神『これは革命じゃなくて改革では?』
さて、孫承宗は有能であったが、妬みを受けて左遷されてしまった。
嘆かわしいが、吾輩も最終的には妬みを受けて殺害される運命にある。同じ愚を避けなければならない。
どのようにすべきか、吾輩の明晰な頭脳も導き出せていないが。
ともあれ、孫承宗左遷後、吾輩は彼の守っていた地域の一部を引き継ぐことになった。この地を守らなければならない。
ただ、新しくやってきた連中は臆病者ばかりだ。
一番守りの堅いところに引きこもり、他は全部見捨てようという始末だ。
ヌルハチは獰猛な獣だ。「相手は大したことなさそうだ」と見るや否や、たちまち軍を率いて遼東へ攻め寄せてきた。
ここで逃げてしまうはたやすいが、あの連中と一緒になればまとめてヌルハチに一掃されてしまう。
そうなったら皇帝にまとめて処断されてしまいかねない。
ここは吾輩が気骨あるところを示すしかない。
「御大将! ここは死力を尽くして守りましょう。我々は御大将を信じています」
地元兵が吾輩をヨイショしてくれるが……
馬鹿を抜かすな!
装備が足りずして、戦に勝てるか!
吾輩の指揮力を信じるな! 吾輩は現場指揮が苦手なのだ!
吾輩個人がヌルハチに勝てるはずがない!
だから、武器の力で勝たなければならない!
そう、武器だ!
吾輩は反対を押し切って、ポルトガルから大量に大砲を買い付けることにした。
何故、奴らが反対するのか。それは大砲を大量に買い付ければ、予算を着服できなくなるからだ。
こ奴らは本当にどうしようもない連中だ。
ただ、連中にとっては、大砲を買いまくって城に設置しまくった吾輩の方が、予算を着服した者という扱いになる。
まあ、実際、人の金で物を買うのは楽しい。自分の金ではとても買えないようなものでも、ホイホイ手を出してしまう。
そうした要素が全くなかったとは言えない
とにかく、吾輩はこの戦いで結果を出すしかなくなった。
結果を出しても妬まれるのだが、結果を出せなければ着服=死刑だ。
結果を出すしかない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます