第87話 やり直せ、更なる覇権へ~鄭和に転生しました・前編

 は~い、アタシは鄭和、ラヴリーな宦官ヨ。

 この世界にLGBTQEを植え付けるべく日々邁進しているワ。


※EというのはEunich=宦官(去勢された者)のことです。


『だからEはあかんって言うの』

「チッ、チッ、チッ。女神さんは世の中のことを分かってないワネ♪ 宦官はね、秩序のある世界に不可欠なものなのヨ。競馬の世界に騙馬っているのがいるでしょ? オスは荒くれもので自分勝手なのが多いから少し落ち着かせて、グループを率いさせた方がいいのネ。山羊なんかは去勢者がいると全体のまとまりが良くなるのヨ」

『うぅ……こいつがきちんとしたことを言っていると、超ムカツクわ』

「シャチもグループのリーダーは閉経したメスよ。生殖能力のある連中は自分勝手になりがち。生殖という概念から超越したアタシのような存在こそ、グループのリーダーに等しいの。21世紀になって世界が殺伐としているでしょ? あれはLGBTQなんてお為ごかしだけ言っていて、最も大切なEを認めようとしないからなのヨ」

『その理屈は断じて認めん』

「意地を張る女神さんも素敵だわん。ところでぇ♪ アタシもたまには転生したいのよねぇ」

『誰に転生するというのよ? 劉謹りゅうきんにでも転生するの?』

「嫌~ん、あれは怖すぎぃ。宦官だから宦官というのは無しよ~。あたし、永楽帝に転生したいワ~」


女神注:劉謹は明中期に栄華を極めた宦官ですが、失脚を恐れて「皇帝になれば失脚しなくて済むんじゃね」と反乱計画立ててバレてしまい、失脚を超えて処刑されてしまいました。何故か処刑の時の細かい記録が残っています。


「あたしみたいなぁ、Eが転生したら、きっと建文帝を殺すこともなかったわよ」

『建文帝生存説もあるけどね』

「ねぇん、いいでしょ~」

『ひぃぃ、きもい顔を近づけるな。分かったわよ、転生でも何でもして千年くらい顔を出さないでくれる!?』

「もう、女神さんったらいけずなんだからぁ♡」


 ということで、アタシは永楽帝に転生することになったはずなんだけど……


 この生まれた時の視界……

 まだ見えないけど微かに映る母親と父親の陰。

 既視感があるわぁ。

 古ぼけた屋敷、ぼろいけど、皆がアッラーに帰依している姿。

 これも見覚えあるわぁ。


 もしかしてぇ、アタシ、アタシに転生しちゃったんじゃなぁい?

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