第67話 ルイ16世に転生しました・中編
18世紀フランス。
この頃、フランスはしっちゃかめっちゃかの状態であった。
原因はというと、ルイ14世が唱えた絶対王政にある。
君主が絶対権を握るということはどういうことか。
財政をも、君主が管理するということだ。
現代日本でも「予算がいい加減だ」と文句を言われることがある。
ただ、それでもその道の専門家がある程度(あくまである程度ね)精査したうえで計算しているのだ。
国王がこれを握るということは何を意味するのか。
国王はその道を全く習得していない。精査も何もなく適当に割り振る。更に「いい加減だ」という者もいないから、とんでもない数字で運用されることになる。
更に、国王の分かることにしか金は行かないから、福祉など、必要だけど地味な分野に回される予算は存在しないに等しい。
普通はこんな無茶苦茶なことをやっていれば、どこかで限界が来る。
例えばドイツの小国がフランスほどの馬鹿財政をやろうとした場合、十年もすれば回らなくなるはずだ。
ところが、フランスは大国だから、持ちこたえてしまうのだ。
それで辛うじて回っている状態が続いていた。
もちろん、問題は解決しない。解決しないまま積みあがっていく。なまじ大国だけにより多くのものを抱えてしまえる。
だから客観的に見れば、いつ倒れるのかという状態だ。しかも、積みあがっているから倒れた時の破壊力は果てしないものになる。
しかし、多くの者はそう思わない。
何故なら、誰もフランスが倒れるところを見たことがないからだ。
ルイ16世が生まれたのは、そんなフランスだ。
喩えるなら、ソ連の崩壊に近いのかもしれない。
この時代だとフランスはイギリスと並ぶスーパーパワーなわけだし。
ルイ16世は立場的にはゴルバチョフと近いわけだ。
このままではダメだということは分かっている。
とはいえ、制度を全く違うものに一昼夜で変えることは不可能だ。
だから、段階的に何とかしようとした。フランスなら三部会の招集なり、予算の限定的公開だったり。ソ連ではグラスノスチなどだ。
ただ、中途半端な措置ゆえに解決策にはならない。むしろ怒りを溜めてしまうことになり、その怒りが体制転覆という形になった。
体制転覆に貢献したという点では中途半端な改革は良くない。といって、問題を先送りにするのは不可能だろう。むしろフランスは極限的に先送りした部類だ。
となると、勝利条件は一つ、一気に体制を転覆させるしかない。
最高権力者によるクーデターだ。
言葉を変えれば極限的な白色テロだ。
いや、一番排除すべきはおまえだろ、と言われればその通りなのだが、とにかくやりたいようにやるには旧来の風習を一掃しなければならない。
そうでなければ「フランスはイギリスではありません。そのようなことはフランスでは恥です」などと言われて却下されるのが関の山だからな。
ただし、問題はどうやってそんなことを行うか、だ。
フランス陸軍はヨーロッパ屈指だが、国王のみに従うわけではない。陸軍を動かして貴族の一掃を図ろうとしても無駄だろう。というより、陸軍自体が貴族のようなものだからな。
革命が起きた後なら、国民軍というものが使えるが、それはできないので、私兵が必要になる。
幸いなのは、一から転生なので若いうちから準備ができるということだ。
俺は宮廷予算の一部を回して、貧民の子などを引き取って訓練することにした。
彼らは俺がいなければ死んでいた。
当然、俺に対する忠誠度は抜群、死をも恐れぬ最強の兵士達となってくれる。
ただ、警戒されるといけないので、表向きは狩りを楽しむための手兵だと説明しておいた。
月月火水木金金というスケジュールで、彼らは少しずつ強くなっていく。
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