第66話 抗え、時代の波に~ルイ16世に転生しました・前編

 我の名前は覇王!


 ……じゃなかった、俺の名前は奥洲天成だ。

 日々、転生させられる社畜のようなものだ。

 転生が社畜? と思われるかもしれないが、最近はほとんど休みもないからな。


『まだ項羽気分が抜けないの?』

「ちょっとやりすぎてしまった」

『しっかりしてもらわないと困るわよ。そうでなくても最近、天成のやり口には批判が多いんだし』

「何? 俺に批判だと?」

『そもそも、この話はどうしようもない歴史の重みがテーマのはずなのに、最近結構勝ったりしているし、おまけに項羽みたいなおふざけもあるし、メーデーやら料理の鉄人に影響受けたとしか思えないシーン出してきたり』

「最後のは俺の責任ではないぞ。あと、勝って批判を言われるというのも心外だ」

『成功回の後には、失敗回が見たいのよ。ということで、今回はルイ16世ね』

「何!? ルイ16世? ちょっと待て、この前、ナポレオン・ボナパルトに転生したじゃないか。同時代だぞ?」

『でも、立場は全く逆でしょ。同時代とはいっても、活躍期間はかぶっていないし』

 確かに……。


 にしても、ルイ16世だと?

「こいつで生き残れる目あるの?」

『それを探すのがあんたの仕事でしょ?』

 いや、まあ、それはそうなんだが。

 しかし、ルイ16世はいかん。

 世間一般にはマリー・アントワネットが悪いだの、ルイ16世も暗愚だっただのと言われているが、この二人どうこうという問題ではない。

 ルイ15世あたりが残した負債がでかすぎて、どうしようもない事態に陥っていた。

 革命を阻止するというのはほぼ不可能であって、せいぜい、議員を早くから買収して死刑賛成を減らすことくらいだが、それにしてもあのロベスピエールとかがいるからな。

 納得のいく結果が出るまで、何度でも投票をするとかやりかねない。

 ギロチンの露となる運命が待っているようにしか見えない。


『もちろんだけど、早い段階でフランスから逃げるとかそういうのは無しよ』

 おまけに縛りプレイまで来たというものだ。

 言われなくても、フランス王が逃げるというのは現実的ではないけどさ。


 とはいえ、断れるものでもない。

 それに考えようによっては、死ぬまでは国王として楽しくできるのも事実だ。

 史実のルイ16世はいまいち楽しくない男だったようだが、せっかくの国王生活、目一杯楽しもうじゃないか。


「分かった。ルイ16世に転生しよう」

『りょーかい。それじゃ準備が終わったらヨーロッパ方面の転生機に乗って、出発してちょうだい』

 転生機、この前事故ってなかったっけ?

 色々準備したのに途中で事故って、ルイ15世に転生したとかは勘弁してほしいんだが。

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