第57話 愛は独り占めするもの~カーシー・バーイーに転生しました・前編
ワタクシの名前は奥洲郁子!
今日も悪女ライフを堪能して生きておりますわ。
「今回の転生先は誰ですの?」
『うーん、テンセイがいつ戻ってくるか分からないからね~』
そうでしたわ。項羽に転生した従兄の天成は、ひたすらバトルモードに浸ってしまい、いつ終わるか分からない状態でしたわ。
『というわけで、カーシー・バーイーに転生してちょうだい』
「……一体、誰ですの?」
名前すら知りませんわ。
音の響きからすると、インド人でしょうか?
『……バージー・ラーオは知っているわよね?』
「マラータ同盟の宰相(ペーシュワー)ですわね」
20歳で国家の重鎮となり、ムガル帝国やポルトガルやデカンの藩王国らをことごとく下して、マラータ同盟の最盛期を築き上げた存在ですわね。
『そのバージー・ラーオの第一夫人よ』
「ほう……。うん、第一夫人というからには、第二や第三もいるのですか?」
マラータ同盟はヒンズー国家だったはずですので、イスラームのように四人の妻帯は認められておりませんわ。
とはいえ、国家君主のようなものですので、妻が複数いるのは普通でしょうが。
ハッ!?
これは、ワタクシが再三オスマンのハーレムを牛耳りたいと主張してきた答えですわね。オスマンはありきたりなのでマラータのハーレムに君臨してこいということですわね。
「分かりましたわ! この奥洲郁子! 見事マラータを牛耳ってみせましょう!」
かくして、ワタクシは18世紀インドへと転生することになりました。
その資料を眺めてみます。
バージー・ラーオは20歳で国家を担う立場に就き、40歳の時に熱中症で急死する頃にはインドをほぼ制圧していた化け物です。
その第一夫人たるワタクシは、同じ地域出身でヒンドゥー教徒でしたので身内にも容れられていた。なるほどなるほど。
一方、第二夫人のマスターニーは別の国にいてイスラム教徒だけれど、バージー・ラーオと愛し合い、国と宗教を超えた愛があった……
バージー・ラーオの死後、カーシー・バーイは息子たちの面倒をみたが、マスターニーは彼に殉死した。
……何ですって?
これを読む限り……ワタクシの方が悪役ということですか?
しかも、悪女ぽいのも第二夫人の方ではないですか。
第一夫人、ただ浮気されてビミョーな立場の弱い女にしか見えません!
ワタクシ、騙されてしまいましたわ!
またしてもあの女神に一杯食わされてしまいましたわ!
「管制官! ワタクシの転生はストップしますわ!」
『ダメです。今更列を乱せません。前にいるごうだたけしがゴータマ・シッダールタに転生した後、貴女も転生してください』
キィィィィ!
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