第51話 それでも動いているのか?~ガリレオ・ガリレイに転生しました・前編

 俺の名前は奥洲天成。


 なのだが、最近、ヨーロッパへの転生が少なくなっている。


『貴様、不満そうだな?』

 おっ?

 珍しい。久しぶりにメガネをかけた男神の登場じゃないか。

『ただ、おまえの不満も分かる。この話は最初"中世ヨーロッパに転生しました"というタイトルだったのに、段々ネタがなくなってきて、東洋やらインドも普通に入ってきてしまった。第二部でもその流れが続いている』

「そうなんだよな~。まあ、都合よく話を構成できるネタがないのは理解しているが」

『だが、今回はヨーロッパだ』

「ほう? 誰だ?」

『ガリレオ・ガリレイだ』

「……」

『どうした? 急に渋柿でも食ったような顔になったが』

「地動説を教皇庁に認めさせろって話になるのか?」

『もちろん、最後まで認めずに火刑に処せられて、伝説になるというのも一興だな。史実そのままに「それでも地球は動いている」などと言いたくはないだろう』

「それはまあ、世界史上でも有名な言葉だが、敗北宣言は言いたくないわな。うーむ」


 今までは戦乱の政治家だったが、初めて学術系の奴で来たわけか。

 しかし、勝利条件のきつさは並の政治家や国王よりも高いな。あのカチンコチンのローマ教皇に地動説を理解させるということになると。


『嫌ならおまえの母国の日本に転生するか? 蘇我蝦夷そがのえみしが最近不人気でな。希望者を求めている』

「せめて入鹿いるかにしてくれよ」

 蘇我蝦夷なんて、地味過ぎて作者が話を作れんわ。入鹿でも厳しそうなのに。


 仕方ない。

 ガリレオ・ガリレイに転生するか。

 晩年まではうまく行っているんだよな。晩年になって失敗しただけで。


 ただ、今回、晩年もうまく行かせるためには、早い段階から布石を打っておかないとダメなんだろうな。

 となると、色々研究しなければならないし、有力者へのコネも早めに作っておかなければならない。

 そう考えると、国王とか政治家とほとんど変わらないような気もするな。


『最近、天界の方で「火刑体験機」を導入したのだが、転生する前に経験しておくか?』

「いらんわ!」

 経費で何というものを買っているんだ、こいつらは。


 とにかく、俺は16世紀のイタリアへと天成……もとい転生した。

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