第41話 【番外編】世界三大提督裁判・前編
俺の名前は奥洲天成。
毎回、転生している俺だが、今回は天界に残って仕事をすることになった。
ここは天界の裁判所。
女神が奴の本性にぴったりの黒いローブをまとって、高らかに宣言した。
『開廷!』
続いて、剽軽そうな男が入ってきて、被告人席に立つ。
女神が名前を問いかけた。人定質問だ。
被告人が答える。
「名前はジョン・ポール・ジョーンズ。生まれた場所はスコットランドで、死んだ場所はフランス・パリです。生前は主としてアメリカ海軍とロシア海軍で働いていました」
『よろしい。間違いないようです。それでは検察官から起訴状を読みあげてもらいます』
検事席にいる郁子が立ち上がって、起訴状を読み上げる。
「被告人ジョン・ポール・ジョーンズは訴外ホレイショ・ネルソン、訴外東郷平八郎とともに『世界三大提督』の一人として挙げられています。しかし、二人と比較すると華々しい活躍がありません。名誉を不当に積み上げているのではないかという疑義があり、今回の起訴に至ったものです。すなわち、この男は過大評価されているのですわ!」
「い、異議あり!」
俺が叫んだが、『弁護人の順番は後です』と職員たちに押しとどめられる。
歴史は常に研究されている。
結果として、時に正当な、時に不当な修正要求を受けることがある。
今回の事件もその一つだ。
『被告人ジョン・ポール・ジョーンズ。貴方は"世界三大提督"としてふさわしくないのではないかということで、起訴されています。理解しましたね?』
ジョーンズは「らじゃ」と頷いた。
『この法廷では黙秘権は一切認められておりません。不都合なことも含めて全て話すようにしてください』
まさかの黙秘権全否定。
そこは「黙っていても嘘をついてもエンマ大王がいるから全てお見通しだ」くらいにしてくれよ。
『被告人、貴方の方から言いたいことはありますか?』
ジョーンズは少し首を傾げてから言った。
「ネルソンも東郷も自分より後の時代の人間ですからね~。自分が生きていた時には三大提督なんて無かった称号なので、正直どう答えていいのかさっぱり分かりません。ふさわしいかふさわしくないのかも含めて、正直どうでもいいですね」
「こいつは裁判を舐めておりますわ!」
郁子が立ち上がって叫んだが、女神が『静粛に』と制する。
ざまあみろ、いい気味だ。
『冒頭手続は終了しました。次回より証拠調べ手続に移りたいと思います』
さて、弁護人である俺の出番がやってきた。
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