第39話 ナポレオン・ボナパルトに転生しました・後編
"天界"
「女神様、今週のコピー代でございます」
『ご苦労さま……って、何なの!? このコピー代はぁ!』
「はい。ナポレオンに転生する人が、大量にコピーしていきましたので」
『テンセー! コピー代はタダじゃないのよぉ!?』
"1795年、フランス"
何か遠くから怨念じみた声が聞こえてきたような気がしたぞ。
まあ、いいや。
一番やばかったロベスピエールの一党も処刑されて、どうにかフランス革命も落ち着いてきた。
ここから、俺の上司であるバラス率いる総裁政府による統治がスタートする。
まず俺がやるべきは、王党派の反乱の鎮圧だ。
こいつらは激情に燃える市民達を連れて進軍してくるので厄介だ。
……なんて考えるのは素人だ。
「余はバラス総裁の代理人としてお前達に制裁を加えに来た。愚民共め、バラス総裁の怒りを受けよ! 撃てぇ! バラス総裁の鉄槌を下すのだ!」
俺は市民もろとも吹っ飛ばして勝利した。
何人か非難している連中もいるが、殺しに来たということは殺される覚悟をしてきた、ということだ。知ったことではない。俺はバラスの代理人だし。
身分の格差もなくなったんだし、そこらへん平等だ。
と同時にジョゼフィーヌとの恋愛イベントも始まった。
本体は知らんが、俺はあんまり年増の女が相手なのはなぁと思う。もちろん、20歳以上年下ならいいというものでもないが。
同年代の恋人を捨てることもないと思うが、ジョゼフィーヌは結構幸運の女神っぽいところもある。結婚しておいた方がいいのだろう。
「俺は義経転生で学んだ。女の家柄というか、能力も重要なんだ。だから、デジレ、おまえとの婚約はなかったことにしてくれ」
「ガーン!」
コピー資料の件以外はここまでナポレオンの人生をそのままなぞっている。
もっとも、それ以外に選択肢がないのも事実だ。
皇帝になるまでは大成功しているのだから基本路線を変える必要はない。
俺は順調だが、フランスは必ずしもそうではない。
何といっても、フランスは革命という物騒なものを抱えている。爆弾を抱えるだけ抱えて歩き回っていると言ってもいいだろう。
もちろん、総裁政府もヨーロッパ全部を敵に回したくはないが、誰からも相手にされない。ここまで周りが敵だらけになった国というのは歴史上でも珍しいのではないだろうか。ソ連成立直後でも、もうちょっとマシだろう。
そんな状況を、フランスは力でまかり通る。
そもそも、フランスが酷かっただけで、封建主義の問題というのはどこの国だって一緒だ。能力主義もないし、兵制だって古いわけだからな。
だから、オーストリアやドイツは怖くはない。
唯一の例外はイギリスで、イギリスのみは議会制が発展した分、予算管理が他国より進んでいた。予算管理が進んでいるということは金を賄う時の利息なども安いし、審査も通りやすい。
金回りが透明ということは産業が発展もしやすい。
このプラス循環を謳歌しているイギリスにはさすがに勝てん。
史実のナポレオンはイギリスを食い止めようとしたが、無理なものは無理、諦めるべきだろう。
ただ、逆に予算管理がしっかりしているということは、無駄な出費をしたくないという考え方にもなってくる。
その気になれば、ドーバーを渡る構えを見せておけば、全面決戦の愚は取らないだろう。
イギリスにとっては、フランスに勝っても大出費で自らの地位まで落ちたら本末転倒なわけだからな。ドイツやオーストリア、スペイン、ロシアに金と兵器だけ出して茶を濁すに違いない。
やはりイギリスは海以外では大きなことはしてこない。
もちろん、海で勝てないのは辛いのだが、どうせ元々勝てていない。
むしろ、戦わないことで本来失っている戦力をそのまま保持している。
イギリスは「勝てるはずだが、フランス海軍もかなりの戦力だ。決戦を仕掛けて予想より被害が大きければ」と考えているに違いない。
もちろん、それは俺にも言える。
敵に勝つのも大切だが、重要なのはフランスで頂点に立つことだ。
その準備は着々と進んでいる。
「将軍、お夜食のチーズを持ってきました」
「むにゃむにゃ、ジョゼフィーヌよ、今日はよしてくれ。疲れているんだ」
「……?」
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