第38話 ナポレオン・ボナパルトに転生しました・中編
フランスが燃えている。
1789年、フランス国民は度を越した国王の支配体制に異を唱えて、革命を起こした。
フランスはヨーロッパにおいては国王の権力が強い方の国だった。太陽王ルイ14世は言うまでもないし、ルイ15世時代もポンパドゥール夫人が好き放題していたからな。
ただし、強ければ強いだけ大きくなる。大きくなりすぎると、体を支えきれなくなるのだろう。
20世紀の冷戦体制でも、一番強かったはずのソ連が豪快に倒れてしまったわけだから、な。
巨人は派手に倒れるわけだ。
サンフランシスコや読売のことではないぞ。
俺は「別に……」ってところだな。
正直、フランスでは「こいつ、訛ってやんのー」と馬鹿にされていて、いい思い出はない。給与がいいから在籍しているだけで、給与をくれる程度にフランスが存続してくれるならそれでいい。
しかし、革命の余波っていうものは恐ろしいものだ。
人を食いつくすエネルギーというか、誰でもこの道に引きずり込みたいねずみ講的パワーというか……
俺もそのまま生きていると、ロベスピエールの弟オーギュスタンと関わり合いがあるということで逮捕される憂き目を見ることになる。
このあたりで、ナポレオン的人生から離脱しなければならない。
ナポレオンで最終的な勝利者となるには、まず『フランス革命の体現者:人民に寄りそうもの』という立場が必要だ。これは実際に途中までナポレオンが実践していたものだな。
ただ、これしかなかったからナポレオンは最後まで続かなかった。
革命の体現者たる地位はヨーロッパの他国からすれば危険極まりないものだ。
何せ、この時代のヨーロッパはほぼ全ての支配者が何らかの血縁関係にある。その最も大きな一つであるフランス国王をぶっ殺した革命と民衆の自由というのは、この当時の人間にとってはとてつもなく危険なものだ。それこそオウム真●教とか統▽教会などが赤ん坊に見えるほどにな。
後々、妥協というか飼い慣らすような方向性になったが、この時代……ナポレオン1世に関してはそんな選択肢はありえない。
ヨーロッパ全国を徹底的に叩きのめす自信があるならともかく、ないのなら、もう一つ必要だ。
俺の地位を保険するもう一つの何かが。
まず思いついたのはタンペレ塔に囚われているルイ16世の息子ルイ17世のことだ。
彼は1795年に死んでしまったが、もし抱えることができれば大きな戦力となる。「皇帝となる男が、国王を抱えるのは変ではないか」という疑問もあるかもしれないが、ルイ17世は死んだとき10歳だし、虐待を受けていたという。
人道的な措置からルイ17世を保護した、と主張するのは十分成り立つし、ルイ17世を保護すれば他国も迂闊に手出しはできない。
……のだが、ルイ16世の娘達は生き残ったのに、ルイ17世だけ幼年で変死したのはやはりそれ相応の理由があるのだろう。
魅力的ではあるが、迂闊に手を伸ばした結果「ナポレオンは国王派である! 処刑せよ!」となってしまっては元も子もない。
俺はどうしたいいだろうか。
うん? 下士官が近づいてきたぞ。
「将軍、チーズでも食べますか?」
「おお、食べるぞ。気が利くではないか」
このブルーチーズは美味い。
特にこの独特なかつ芳醇な香りが溜まらない。
"女神の一言"
最後はナポレオンおなじみの話です(笑)
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