第37話 動かせヨーロッパ~ナポレオン・ボナパルトに転生しました・前編

※今回は四話構成の予定です。



『天成、今回もやりがいのある仕事を持ってきたわよ』

「最近有名人が多いけど、たまには普通の転生先にも行きたいんだが」

『それは今回の仕事ぶりにもよるわね』

 女神のこうした言葉はアテにならないが、反論したら事態が好転するわけでもないだろう。

 とりあえず、今回は従うしかなさそうだ。

「誰に転生するんだ?」

『ナポレオン・ボナパルトよ』


 ナポレオン・ボナパルトか……。


 フランス革命の申し子にして、ほぼ一つになっているヨーロッパに歯向かった男だ。歴史に興味がある人間なら、ほぼ間違いなく知っているくらいの有名人。


 うーん、ただ、何を目標にすればいいのだろうか?


 本人の最期は不本意だったかもしれないが、結果としてナポレオン家はヨーロッパの名家になった。お家断絶の事態がなければ、現代でもナポレオンは公爵でも自称して存在していただろう。

 だから、結果としては勝ち組である。

 とはいえ、本人が不本意な最期だったのも間違いない。


 これを変えるのか?


 イギリスに勝つ……のは無理だろう。

 ロシアに勝つ……のも現実的ではない。

 もう少し穏当に、どこかの段階でヨーロッパと妥協。

 そんなことができるのかね?


『提案の中には、同時に郁子ちゃんをマリー・アントワネットにしてみようかという動きもあったのだけど……』

「あぁ、あいつなら『パンがなければケーキを食べればいいのですわ!』って普通に言いそうだもんな」

『作者が死ぬから、勘弁しておいたわ』

「そうだな。賢明だろう」

 というか、あいつがマリー・アントワネットに転生して何をするんだ? 

 悪女路線まっしぐらで本物より早く処刑されるんじゃないか?


「勝利条件みたいなものはあるのか?」

『それはもう、革命勢力がヨーロッパを完全席巻まで行けばカッコいいんじゃないかしら?』

「きっついなぁ」

『そこまで言うのなら、仕方ないわね。助っ人を呼びましょう』

 女神は電話で誰かに来るように伝えている。

 助っ人だと?

 助っ人をつけてくれるのか?


 しばらくすると、小型タクシーがやってきた。


『フランスということもあるし、革命三銃士を連れてきたわよ』

「革命三銃士!?」

『革命を好き放題思う存分操る男、毛沢東』

「うっす、よろしく」

『死ぬなら革命家として、チェ・ゲバラ』

「がんばります、よろしく」

『日本最大の革命家・西郷隆盛』

「よっす、どうも」


「……お断りで」

『えー、頼れる革命家達じゃない?』

「こんなのが近くにいたら、フランス革命が更に血なまぐさくなってしまうわ! 助っ人くれるなら、もっとまともでチートな奴をくれよ! それこそ前話にいたポチョムキンとかをだな」

『ポチョムキン、革命とは関係ないじゃない』

「無理に革命と結び付けなくていいんだけど」

 とにかく、こいつらがいたら革命時代が10年以上余分に続いて、フランスもヨーロッパも大変なことになってしまう。


 自力で頑張るしかない。

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