第36話 エカチェリーナ2世に転生しました・後編
女帝となり、ポチョムキンと共に帝国を支配しますわよ!
教育面をダーシュコワ夫人に任せ、内政や国防をポチョムキンに任せるのです。
二人は非常に有能ですので、スイスイと物事が進みますわ。
余った時間で、ワタクシは可愛い貴族と遊ぶことができるのです!
『……そうだ、女帝たるもの息抜きも必要だね。しかし、忘れてはいけない。遊び相手はあくまで遊び相手に過ぎない。昨今風に言うならセフレとかそうなるのだろうか』
「もちろんですわ。大切なことを相談するのはポチョムキンだけ。ワタクシ、自分の遊びを国家運営に反映させることはありませんわよ。彼らはワタクシにとってペットのようなものです。ペットに相談はできませんわ」
女帝を狙え③:遊び相手とはあくまでも遊びだけの関係と割り切れ
「……ハッ! 愛人百人できるかな♪ を達成するために、トルコ征伐に費やす予定だった時間を無駄にしてしまいましたわ!」
『すごいね……。君のそのタフネスさは私の上を行くよ』
「しかし、最強の恋多き女帝であるワタクシでも三桁到達がやっとですわ! 国庫を考えれば、男より女の主君の方が遥かに安上がりで済みますわね!」
『確かに男の皇帝なら、並レベルでも後宮三百人だからね。国営大会社ができるくらいだ』
「その分、ワタクシは愛人一人一人への待遇は惜しみませんことよ。彼らはワタクシの愛玩ペットなのですから、たっぷりと年金を与えて、綺麗に着飾らせております。政治には一言も口出しさせませんが」
『そうだ。女帝たるもの、愛人に不満を抱かせてはいけない。邪険に扱って週刊誌に垂れ込まれるような甲斐性なしには愛人を囲う資格はないのだよ!』
女帝を狙え④:愛人には口出しさせるな、でも金は出せ
ロシアはシベリアの東まで進み、トルコもぶっ倒して黒海沿岸への足掛かりを作りました。
「女帝陛下! クリミアまで含めて、整備を進めましたぞ」
ウクライナ戦争で倒されてしまいましたが、この時期、ポチョムキンがクリミア方面も整備いたしました。
史実では、エカチェリーナも多少耄碌して、ポチョムキンを次第に軽んじるようになったということですが、ワタクシは若いつばめに政治にまで口出しさせるつもりはありません。
ポチョムキンには死ぬまで働いてもらいますわ。
「ダーシュコワ夫人、そろそろトルコを滅ぼし、コンスタンティノープルをロシアのものにしたいのです。準備してもらえますか?」
そして、遂に念願のコンスタンティノープル侵攻計画を打ち明けました。
ロシアは、モスクワを第三のローマと思っております。ローマの後をコンスタンティノープルが継ぎ、そのコンスタンティノープルの後をモスクワ大公国が継いだというものです。
まあ、根拠はよく分からないのですが。
しかし!
ワタクシがコンスタンティノープルを支配すれば、モスクワがどうこうなどということはもう関係ありません。
ワタクシがローマ皇帝の後継者となるのですから!
「……お断りします。トルコを滅ぼすことには反対です」
「何ですって!?」
まさか! 信頼していたダーシュコワ夫人から反対されてしまいました。
「私は自由と教育を重んじます。トルコの教育レベルはお粗末極まりないものですが、トルコが有している一部の自由を認めないわけにはいきません」
「トルコの自由? 一体何ですの? ロシア以上に専制的な国ではありませんか。エルドアンとプーチンとで、そこまで差があるとお考えですの?」
「……私はエルドアンとプーチンが何なのかは存じ上げませんが、トルコは聾啞者への雇用、身障者への待遇など秀でた部分がございます。トルコをぶちのめすだけなら構いませんが、トルコを滅ぼすのは少数派の自由という観点から賛成いたしかねます」
「ぐぬぬぬ」
ダーシュコワ夫人との関係はこの時を境に悪化してしまいました。
更にフランス革命が起きてしまい、彼女は自由という観点からフランスを支持する側に回ってしまいます。
「陛下! 最近の陛下は反動的過ぎます。今や啓蒙専制君主などと呼べません。単なる専制君主です!」
「お黙りなさい! フランスのように革命を起こされては叶いませんわ!」
「これ以上、反動的な政策を採用するのはやめてください!」
「うるさいですわ! そんなに言うのなら出て行きなさい!」
「……承知いたしました」
かくして、ダーシュコワ夫人はワタクシの下を離れていきました。
「ならばポチョムキンに……」
「タヴリチェスキー公爵(ポチョムキンの爵位)が亡くなられました」
ガーン!
彼を抜きに、ワタクシはどうすればいいと言うのですか!?
あぁ、しかし、もう18世紀も終わってしまう……
ワタクシの寿命も残されていない……。
"女神の総括"
『エカチェリーナ2世に転生すると、みんな最初は努力するんだけど、すぐにダーシュコワとポチョムキンというダブルチートカードに頼り切りになるのよねぇ』
「あれは強すぎますわ。出せば、それだけで解決するのですから……」
『その二人との別れ方があまり美しくならなくて、そのショックとフランス革命への対応にアタフタして、タイムアップになっちゃうのよね~。終わってみれば、本人の人生をほぼ丸々コピーしただけで、転生になっていない、と』
「イージーゴーイングすぎて快適さに溺れてしまいましたわ。試練だらけも困りますが、楽すぎるとチャレンジ精神に差し障ります」
『則天武后からの最後の伝言があるけど、聞く?』
「何ですの?」
『私は馬鹿な元皇族を叩きまくっていたから、やりたい放題やっても国民の反応は良かったんだよ。君もそうすればよかったのに』
「ロマノフ朝は女帝が頻繁に入るし、中国のように後宮ウン百人世界でもないので叩ける皇族はそんなにおりませんわ……。しかし、プガチョフのような存在をもう少し用意しておいても良かったのかもしれませんわね……」
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