第34話 エカチェリーナ2世に転生しました・前編
ワタクシの名前は奥洲郁子!
先ごろ、従兄の天成の資料を見つけたのですが。
何ということでしょう!
ワタクシの怒りゲージが急激に高まってまいりました!
「ダ女神はどこですの!?」
『誰がダ女神だ!』
「天成をオスマンに派遣したことを黙っていましたわね! ワタクシもオスマンに行きますわ! ハーレムの支配者になり、悪女として君臨するのです!」
『えぇ~、次は八百屋お七の予定だったんだけど』
「八百屋お七に転生して、何を変えると言うんですの! 冗談はよし子さんですわ!」
『古い……』
「とにかく、オスマンに転生させるのです!」
『ちょっと! 人の襟を掴まないでよ!』
ドサドサドサッ
「むむっ、資料が落ちましたわね。こ、これは……エカチェリーナ2世への転生指示書?」
『コラ! 他の人のものなんだから、勝手に読まない!』
「エカチェリーナ2世なんて大成功した類ではないですか。転生対象には向かないものと思うのですが」
『天界にも色々な考えがあるのよ』
「ふむ。まあ良いですわ。ではワタクシ、オスマンのハーレムではなく、エカチェリーナ2世に転生いたしましょう」
『あんたじゃないっちゅうねん』
「天成は失敗しましたが、ワタクシがエカチェリーナになればトルコを丸々征服して無敵のロシアを作ることが可能です! この任命書類はいただいていきますわ!」
『神の話を無視するなー! 書類を返せー!』
かくして、ワタクシは任命書類の氏名欄に名前を書き込み、女神の勧めるがまま、エカチェリーナ2世へと転生することになりました。
エカチェリーナ2世はスタートがハードですが、そこさえ乗り切れば段々イージーになってくる展開ですわね。
『聞こえるか、エカチェリーナ……?』
ハッ!?
誰かが、ワタクシの心に語り掛けてくる?
このロシア最強の女帝に語り掛けてくるとは何者?
『私だよ、則天武后だ』
「何と! 中国史唯一の正式な女帝である則天武后!」
『そうだ。今、そなたの心に直接語り掛けている』
「一体、何の用ですの? もしかして、中国には手を出さないでほしいという哀願?」
『そうではない。私とそなたは、世間一般にはびこる「女は帝王になれない」というのを覆したたった二人しかいない存在だ』
「……ほほう。ただ、マリア・テレジアやエリザヴェータ様もギリギリ入れてやってよろしくありません?」
『マリアは正式に皇帝になっていないし、守り抜いただけで勝ちえたって感じではないからね。エリザヴェータは個人的資質は良かったけれど、外交的な得点が少ない』
「……分かりました」
『だから、世間一般の女性が朝いきなり帝王になっていた時にどうすればいいか、心得を示す必要があると思うのだ』
「なるほど! ワタクシが女帝たるもの何をすべきか範を示すことで、いきなり女帝になっても大丈夫、というわけですね」
さすがは則天武后、準備がいいことこの上ありません。
朝起きたら、いきなり女帝になっているケースがどれだけあるのかは知りませんが。
かくしてワタクシは18世紀のドイツへ。
ゾフィー・アウグステとして転生しました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます