第27話 燃えよ鎌倉最終回〜そして次の時代へ

 郁子が転生していた北条政子と連携したことで、義経としての俺も非常にやりやすくなった。

 何せ、一門筆頭としての俺(範頼他の兄弟は頼朝と政子が暗殺した)に、将軍頼家の母としての政子が加わるわけだからな。


「将軍の権威をどうする?」

 但し、それは個別案件で、全体となるとそうもいかない。

 将軍の権威をどこまで伸ばすかは検討を要する。

 頼朝と異なり、頼家には御家人を差配しきる力がない。

 これを無理くり強化させるなら血を見ることは明らかだし、混乱が続くと朝廷が復活してくるかもしれん。

 朝廷が実権から離れて、力を失っていた室町や江戸時代と異なり、この時代の朝廷は少し前まで実権を握っていた違いがある。

「執権を矢面に立たせて、将軍は温存した方がいいわね」

「俺もそう思う」

 ということで、俺は頼家の後見人、政子は頼家の母親。揃って会長役に就いた。


 悪いの全部、社長イコール執権の北条義時だ。

「義時、梶原が不穏ですよ」

「そうですね……」

「義時、畠山も怪しいです」

「……重忠を斬ります」

「義時、朝廷から苦情がきてますよ」

「あ、姉上、ちょっとは手伝ってくださいよ」

「無理です」


 義時、悲惨過ぎる。


 とはいえ、政子はこうするしかない。

 北条というさほど強くない家が、これだけ高い位置にいるのは、一重に政子が将軍の母だからだ。頼家か政子が失敗して失脚しようものなら、北条家自体が存在意義を失う。

 ストレスで死にそうな義時は哀れだが、北条家が鎌倉の管理人として認められるまでは耐えてもらうしかない。


「んで、天成兄ちゃんはどうするの?」

「俺の家も幕府内に役割を見出したいところだが」

「でも、兄ちゃんはともかく息子は会長役無理よ。功績がないし」

「そうだな、あれ?」

 空いてる役割ねーじゃん。


 実務的な役割は残ってない。

 権威的な役割は俺の一族には無理だ。

 俺より上の頼朝の直系がいるからな。

 仮にそれがいなくなれば?

 それでも俺の家には移ってこない。

 権威は三郎(義兼の嫡男足利義氏。母は政子の妹時子)が担うからだ。

 繰り返しになるが、この時代、母の家の力もすごい。

 頼朝と母系が同じ三郎と、俺とでは雲泥の格差がある。


 つまり、俺が死んだら、息子達は安達や三浦と同じ御家人サバイバル競争を生き残るしかない?

「む、娘を頼家か実朝に……」

「それは無理よ。今は朝廷と武家の関係を強化しないと。だから、実朝亡き後摂関将軍や皇族将軍になったわけだし」

 言い返せん……


「グハァ!」

 義時がついに力尽きた。

 息子の泰時が悪魔の地位(執権)につくことになる。


 そして、俺たちの寿命も近い。

 俺達の死後、頼家や実朝はこの地獄の鎌倉を生き残れるのか。

 そして俺の息子は……



“女神の総括”

『結局無理だったわね』

「クゥゥ、公暁を兄ちゃんの一族に引き取らせるべきでしたわ」

「そうしたら、義経vs北条のバトルファイッ、だろ」

『鎌倉に行ったのに、実は答えが足利にありましたというのは皮肉よねぇ。むしろ地方に拠ってしまって島津みたいに辺境の一族くらいの方が家は全うできたんじゃないかしら?』

「義経クラスが地方に下ったら、絶対に『何か企んでいる』と危険視されたと思われますわ」

「生き残れても信長の野望で、『この家ヨッエー、何で戦国生きてんの?』とか言われそうだな」

『三郎を殺せば良かったじゃん』

「……本当に女神ですの?」

「理由が無いだろ。頼朝に忠実だし、いるのかいないのか分からないくらい地味だが、実はちゃっかり要地を持っているし」

「結果的には、何故足利がサバイバルしていて、室町幕府を作ったのかが分かったというオチでしたわね」

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