第20話 モンケ・ハーンに転生しました・終章
しばらくすると、フレグから手紙が届いた。
『ちーっす、兄貴。アッバース朝を倒して、アイユーブ朝にも壊滅的打撃を与えたよ。ただ、こっちは砂漠だから馬が大変で、ラクダにも乗れる訓練してるっす。馬とラクダの二刀流戦士が大量に生まれるから期待してほしいっす』
うまく行っているようだ。
そして、南宋も打開策など何もない。
ペースが速いから、史実では十年以上粘った襄陽の呂文煥はまだガキだ。奴のいない城など余裕で落とせるわ。
どう見ても我々を阻む者はない。
完全勝利だ!
世界をこの手に!
三年が経過した。
モンゴルは南宋領をどんどん削り、絶好調だ。
俺は余裕綽綽で釣魚城に入城した。
史実では、この城の包囲中に陣没したが、この通り、モンゴルの支配下に落ちている以上、何も恐れるものはない。
深夜。
「こ、皇帝陛下! 城外に敵軍が!」
「何っ!?」
「あ、あの旗印は、クビライ様のものです!」
「何ぃ! 裏切ったか、クビライ!」
俺は城門に駆けだした。
「クビライ、貴様! 弟のくせに兄を裏切るのか!?」
俺が叫ぶとクビライの奴が不承不承出てきた。
「いや~、兄殺しなんてやりたくないんですけどね。仕方ないんですよ」
「何故だ!? 貴様には中国をやると言ったではないか。何が不満だ!?」
「いや、みんな不安なんですよ。敵を倒すことばかり考えていて、戦闘にも疲れたし、もうこの辺でいいんじゃないかって。そのためには兄上が邪魔なんですよ」
うぐっ。
確かに俺は、世界征服のことばかり考えていて、そのために何をするかに専念してきた。支配した土地をどうするかとか、どうしようという発想はなかった。
世界史上誰も成し遂げていない世界征服のことばかりに頭が行っていて、その後のことは全く考えていなかった。
「そもそも兄上、世界全部を手にして何をするんですか? その後我々は用無しになるんじゃないですか?」
「そ、そういうことは……」
クビライ軍が城に攻撃を始めた。
「フレグもバトゥもグユクも自分のところをのんびり治めたいんですよ。そのためには兄上が邪魔なので」
「ま、待てぇ!」
もちろん、クビライが待つはずなかった。
"女神の総括"
『昔、「ドラゴンボール」でレッドリボン軍総帥がつまらない希望を言って、副官に射殺されるなんてシーンがあったけど……』
「世界征服の後まで考えて、世界征服できるか」
『でも、現地人は世界まではどうでもいいわけだしねぇ。世界を征服することより、自分達が一番得することを考えるものでしょう』
「マケドニアがどんどん東征していったけど、『もうこれ以上行きたくねえよ』と部下が反対してやめた。それと同じことが起こったわけだな」
『世界征服するには、強さだけではなく、哲学も必要なのかもしれないわね』
「厚く、高い壁だ……」
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