第17話 目指せ世界。モンケ・ハーンに転生しました・前編

 俺の名前は奥洲天成。


 最近、ヨーロッパ以外の転生が多くて、看板に偽りありになっている気がしているが。

『まあまあ』

「女神か。あんたが来たということは、また新しい転生先が見つかったんだな」

『今回もヨーロッパではないけど、頑張ればヨーロッパに行けるわよ』

「頑張れば行ける? ということは、イスラム系か?」

 そういえば、第二部になってからイスラム国家の人物はまだいないな。

『残念ながらイスラムではないんだけどね。ただ、今回の天成には世界征服のチャンスがあるかもしれないわよ』


 世界征服?

 そんな非現実的なことができる奴、いたっけ?


『今回の転生先はモンケよ』

「モンケ? あのモンゴルのモンケか」

 モンゴル最大の英雄チンギス・ハーンは正妻ボルテとの間に四人の息子がいた。その末子トゥルイの長男がモンケだ。

 ちなみに長男が四代ハーンのモンケ、次男が元の創始者でもあるクビライ、三男がフレグという布陣だ。

 世界史通じて、ここまで強い三兄弟は多分いない。あ、ちなみに四男にアリクブカがいる。こいつも無能ではなかっただろうが、インパクトは薄い。


 モンゴルの掟的には、チンギスの死後はトゥルイがリーダーとなるはずだったが、オゴデイが相続した。


作者注:トゥルイについては49話『あるモンゴル人の相続』も参考にしてね


 オゴデイ時代、モンゴルはヨーロッパに侵攻してここにモンケは付き従った。

 スブタイ、バトゥらと共に強力な布陣で臨んでハンガリー付近まで侵攻したが、総帥であるオゴデイが病死したので侵攻は取りやめになった。


 オゴデイ死後、その息子グユクが継いだが、モンケは反発した。恐らくグユクを暗殺して自らが四代目となった。


 モンケは世界征服を望み、クビライに中国制覇、フレグに中東制覇を命じた。尚、スブタイもバトゥはこの頃には病死していたから、ヨーロッパに関してはピークを過ぎていたと言えるだろう。


 フレグは期待に応えて、アッバース朝を滅亡させた。

 ただ、クビライとは中国統治の方針を巡って対立が生じたという。結局、途中からモンケ自身が乗り出して、疫病にかかって病死した。


 フレグはモンケが病死したため、遠征を中断。

 残存部隊はエジプトでバイバルスとクトゥズに敗れて、世界支配は水泡に帰した。


「二つの条件を満たせば、モンケが統一世界の王になる可能性があるわけか」

 一つは、オゴデイがもう少し寿命があればということ。

 モンゴルは西ヨーロッパまで攻め入ることができた可能性がある。少し古い時代になるがアッティラがヨーロッパをボコボコにしたことがあった。モンゴルならもっとコテンパンにできただろう。


 もう一つは、モンケ自身が死なずに中国、東南アジアまで制することができていればというものだ。

 ヨーロッパ、イスラム世界、インド、中国、東南アジア、ついでに日本も支配する世界史史上最強の国家となっていたかもしれない。


 夢のある話ではある。

 世界史史上、世界(アメリカ大陸とサブサハラは除く)を本当に支配できた者がいたとすれば、それはモンケしかいないのかもしれない。

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