第14話 メアリー・スチュアートに転生しました・前編
『郁子さん、ちょっといらっしゃい』
前回の転生が終了してから数日が経ったある日、ワタクシは唐突に女神から呼び出しを食らいました。
『貴方の前回の楊貴妃への転生はその非道さといい、結末のダメさ加減といい、史上最低レベルの転生として記録に名前を残してしまったわ』
「それは何よりです」
『褒めてないから。天界から厳重注意処分を受けてしまって、次の転生先も決められてしまったわ』
「ほほお。ワタクシに転生してもらえる名誉ある女は一体誰なのでしょう?」
『メアリー・スチュアートよ』
「うん? メアリー・スチュアートというと、タルカスとブラフォードを引き連れてエリザベス1世に歯向かったスコットランド女王ですか?」
『人物はその通りだけど、タルカスとブラフォードは荒木先生の創作だから引き連れることはできないわ』
「何ですって!? あの二人なしに、どうやってエリザベスに勝てというのですか」
『それを何とかするのがあんたの仕事よ。従兄の天成はこの前、インカ帝国を勝利までもっていったんだし、あんたも真の悪女になりたいなら自力でエリザベスに勝ちなさい』
「そんなの無理に決まっていますわ! さてはワタクシのキャラの濃さを妬んで、非道なふるまいに及んでいるのですね!? 無個性極まりない女神の横暴ですわ! 別作品の考案時間10秒の女神アスタルテにすら負ける無個性女神が!」
『何ですって!? キー!』
注:醜い喧嘩が繰り広げられています。しばらくお待ちください。
『とにかく、これは決定事項なのよ。どうしてもダメなら、素直に首を斬られて帰ってきなさい』
「ぐぬぬぬ。せ、せめてハンデが欲しいですわ」
『ハンデ?』
「そうですわ。別のバカ女をエリザベスに転生させるのですわ。それならば勝ち目があります」
『何で、札付き問題児のためにハンデをあげないといけないのよ』
「だったら、別作品のエースクラスを部下に欲しいですよ」
『ははあん、自分が悪女だとか言っているけれど、実体は一人では何もできない無能なわけね』
「何!? 無個性女神のくせに何てことを!」
注:醜い喧嘩が繰り広げられています。しばらくお待ちください。
結局、女神にメアリー・スチュアートを押し付けられてしまいました。
これはまいりましたわ。
確か3歳か4歳かで反乱起きて、10代でフランス王妃になって王と死に別れて、スコットランドに戻ったら貴族共が争っていてそのバランスを取るのに必死、そうこうしているうちに南のイングランドではエリザベスがブイブイ言わせていましたという状態だったはずです。
どう考えても勝ち目はゼロですわ。
王位を捨てて逃亡して、オスマンのハーレムに行って人生逆転を図るくらいしかありませんわね。
『あんた、王位捨てたりしたら、今後しばらくはプランクトンとか不快害虫に転生すると思っておいたほうがいいわよ』
「横暴ですわ!」
逃げ場をあらかじめ封じられておりました。何という酷い話でしょう。
あれ、ちょっと待ってくださいませ。
よくよく考えたら、メアリーはスコットランドで政争に負けたけど、その後、エリザベスに歯向かったから処刑されたのですわ。
勝ち目がないのですから、「エリザベス様万歳! 靴をお舐めいたしますわ。ぺろぺろ」とやっていれば、縁者として生き残れるのではないでしょうか?
そうしましょう。
ワタクシはエリザベスに土下座して生きてまいりますわ。
真の悪女は、土下座など何とも思いませんことよ。
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