第4話 楊貴妃に転生しました・前編
注意:この話には若干グロい表現が入っています。
ワタクシの名前は奥洲郁子!
悪女に憧れる乙女でございます!
この度、従兄の天成が、ロレンツォ・デ・メディチに転生したと聞いて、死んで参りましたわ!
『一々、死なないでほしいんだけど……』
「女神、テンセイはロレンツォに転生したと聞きました。ならば、ワタクシも歴史的な悪女に転生させるのです!」
『……どこでどうやって聞きつけたんだか……』
女神はブツブツ文句を言いながらも、ワタクシが「従兄妹なのに、男は歴史的な人物に転生させて、女はダメなんて差別ですわ。訴訟物ですわ」と騒ぎ立てると資料を調べ始めました。
『ああ、これにしようかしら。アンドラのンジンガ女王なんてどう?』
「おやめくださいまし! あれは悪女ではなく、単純に悪い女なだけですわ! 子供を食べるなんて最低です!」
『……その逸話は、彼女に苦しめられたポルトガル宣教師の作った宣伝って説も強いんだけどねぇ。それじゃ呂雉さんとかどう?』
「それもただ悪いだけですわ! ワタクシに選ばせなさい!」
『天成は自分で選んだわけじゃないけど……』
「ワタクシは楊貴妃に転生するのです! 楊貴妃! 楊貴妃!」
『えぇ……』
「でなければ訴訟してやりますわ! 最上級神に訴えますことよ!」
『ぐぬぬ……』
かくして、女神様との穏やかな交渉の結果、ワタクシは楊貴妃に転生することが決まりましたわ!
『で、何か展望はあるの?』
「展望? 何の展望ですの?」
『……何のって、悲劇的な最期を避けるための展望よ。天成は髪が白くなるくらい必死に考えていて、そのストレスでより悲劇的な最期を遂げたけど』
「ワタクシは何も変えませんことよ」
『えっ……?』
「何を絶句なされているの? 美人薄命というではありませんか。醜く老いさらばえる楊貴妃なんて誰が見たいのです? バラは美しく散ってこそのバラですわ! 権勢を握り、太く短く生きて歴史に永遠に名を残す! 何て素晴らしいことなのでしょう!」
『でも、確か楊貴妃って絞殺されたのよね。あれってかなり酷い死に方じゃない?』
「むっ……?」
『あれってものすごく苦しいらしいし、頭に充血した血で顔は腫れあがり、場合によっては眼球が飛び出る寸前になる。それが美しいと言えるのかしら?』
「むむむ……。それは確かに美しくありませんわね。死ぬならクレオパトラのように毒蛇に噛まれるようなものが美しいですわ。ふむ、確かに検討が必要ですわね。玄宗を洗脳して毒殺こそ至高と思わせるようなこととか」
『まあ、色々考えていてちょうだい』
女神は、まるでワタクシが苦悩するのを楽しむかのような顔をして去って行ってしまいました。性格が悪いことこのうえないですわ。
とはいえ、より完璧な悪女として振る舞うという選択肢もあります。
そうなれば中国四大美人や世界三大美女を突き抜ける存在、オンリーワンの存在となれる可能性もあるのです。
ワタクシ、しっかり考える必要がありますわ。
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