第3話 イル・マニーフィコに転生しました・後編
1469年、親父が死んだ。
遂にこの俺がメディチの支配者となったのだ!
「我が弟ジュリアーノよ。おまえに銀行部門を任せる」
「分かりました」
まずは不採算確定の銀行部門をメディチ本体から切り離すことにした。
弟に押し付けるとは酷いって?
馬鹿を言うな、本来なら9年後には殺される弟なんだ。それを救ってやるんだから、不採算部門の押し付けくらい我慢しろって話だ。
その暗殺事件を起こすであろうパッツィ家に対してはストレートに圧力をかけることにした。
パッツィ家の背後には教皇シクストゥス4世がいる。
だから、教皇に対して最低限の妥協路線を図りつつも、俺は知っているんだ的な態度をとることにした。
「あんさん、変な陰謀したらあきまへんで。ワテら、そんなん簡単に分かってまうんやから。パッツィ家とか誘って、大聖堂で殺そうったって無駄な話や」
「う、うむ……(汗)」
これで大丈夫だろう。
次は財政問題だ。
放漫経営を続けていると、メディチ家が傾いてしまう。
何とかきりつめたいのだが……
①フィレンツェにかける金を減らすと貴族達が文句を言う。文句のある貴族達がパッツィ家などの反メディチに寄りそう。パッツィ家の陰謀再びな展開だ。
これはダメだな……
②文化にかける予算を減らす。文人達がミラノやナポリに行く。最悪トルコに行く。フィレンツェの地位が低下する。
これもダメだな……
③軍隊にかける予算を減らす。トルコがイタリアにやってくる。
やはりダメだな。
あれ、打つ手ないじゃん。
もしかして、今の俺の状態というのはあれか?
先に崖があるけれど、スピードを落とせないバイク乗りな状態なのか?
うぅぅ、何か、何か、いい手はないか?
外交政策……、ダメだ。外交をすればするほどまた出費が増えてしまう。
政治改革……、サヴォナローラみたいな極端な連中が出て来ているから、迂闊なことをすると急進派に乗っ取られてしまう。
どうすればいいんだ……
「うっ!」
痛い! 何もしていないのに痛いぞ!?
これは痛風の症状?
馬鹿な、周りはともかく俺の食生活だけは変えていたのに?
「ロレンツォ様!?」
何故だ、何故、痛風になってしまったんだ!?
俺の意識は闇へと消えていった……。
"女神の総括"
『残念だったわね』
「な、何故、あれだけ食生活に気を遣っていたのに痛風にかかってしまったんだ? そんなに強い遺伝性質を持っていたのか?」
『痛風の原因には、食生活もあるけど、ストレスも大きいのよ』
「何っ!?」
『なまじ先のことが見えるだけに、動けないことで実際の本人以上にストレスをため込んで結局痛風発症となってしまったみたいね』
何てことだ……。
「ということは、結局変更したのは弟ジュリアーノが死ななくて済んだことくらいか?」
『それなんだけど……』
「何だ?」
『貴方の死後、ジュリアーノが息子のピエロと跡目を巡って争うようになって、フィレンツェは大混乱。サヴォナローラに牛耳られてしまったみたいね』
「何だって!?」
『残念ながら、弟は暗殺させておいた方が良かったみたいね。本来のロレンツォよりも酷くなっているみたい』
「ガーン!」
『痛風も諦めて、いいモノ食べていた方が美味しい思いもできたでしょうしねぇ』
そこまで言うかよ、酷すぎる!
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