第67話 東西の境
ある日、俺が死ぬと、神が机の前で唸っていた。
「どうしたんだ? 転生先のネタが尽きたのか?」
『ネタが尽きたのは確かだが、さっき面倒な爺さんがいて、な。色々と文句を言われた』
そういえば、神は転生させようとして文句を言われたということがあったな。
「一体、何の文句を言われたんだ?」
『その爺さんが西洋ヨーロッパに転生したいというから、中世ロシアに送ろうとしたら、「ロシアはアジアで東洋だ。わしは西洋に行きたいのじゃ」と泣き出してしまったわけだ』
何だか最近のロシア大統領に迎合する親ロシア派みたいな爺さんだな。
『それで、西洋と東洋の境がどこにあるのかを整理しているのだ』
「イスタンブールあたりじゃないか?」
東西文明の交差点みたいな扱いだったわけだし。
『その北や南はどうなるのだ。そもそも、中東という地域があるのに中西がないのは何故だ?』
そんなことは知らないよ。
ただ、確かに中東地域って西と東の間にあるわけだから、本来は中東ではなく、真中とでもすべきだよな。
もちろん、中東が真ん中名乗ったら、中国の立つ瀬がなくなってしまうのかもしれないが。
『19世紀前半の政治家であるクルメンス・メッテルニヒはウィーンの東は東洋だと言っていたという話もある』
「そうなると、いわゆる東側陣営も全部東洋に入るのか?」
それは東が広すぎるだろ。
サンクトペテルブルクなんかは西側に海があるんだから、東洋に入れるのは無理があるんじゃないか。
『バルセロナやバレンシアは東側に海があるが、誰も東洋とは言わんだろ』
いや、そういう問題ではなく、だな。
「日本を含めて極東地域というが、これも極西はないよな。アメリカなんかは極西を名乗ってもいいんじゃないか? 何か東側を馬鹿にしている気がする」
『馬鹿にしているだろうな。だが、逆に日本は西を馬鹿にしているだろ?』
「あれ、そうだっけ?」
『番付は東の方が上ではないか』
それ、相撲だけの話だろ。
"女神の一言"
ちなみに相撲の東西ですが、昔は東国出身が東、西国出身が西と出身地によって分かれていたそうです。今はそんなことがありませんが。
境界線は近江あたりにあったようですが、今だったらモンゴルが強いので、玄界灘くらいに置いてしまってもいいのかもしれません。
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