第62話 安息日ならぬ
俺の名前は奥洲天成。
前回(本当に昔は良かった話)、シリアの良さを体感した俺は、そのシリアを巡る争いに巻き込まれて死んでしまった。
『いい場所だけにみんなで奪い合っているうちに、段々劣化していって、劣化していくと少なくなったいいものを巡って更に奪い合うという悪循環に巻き込まれてしまったわね』
「全くだ……」
『せっかくだから、もう一度、昔の方が良かったところに行ってみたらどう?』
何、まだあるのか?
ということで、派遣されたのは……
何だか随分古い時代のような気がする。ここは一体どこだ?
『そこは古代イスラエルよ』
古っ!
おい、ちょっと待て。タイトルから外れているぞ。「中世世界」でなくなっているぞ。
『まあ、いいじゃないのよ』
いい加減だな。
ともあれ、集落の方に戻ると。
「テンセイ様、お帰りなさいませ」
おや、何だか大勢の人間が出迎えに来たぞ。
どうやら、俺はこの世界では中々の金持ちのようだ。
俺の下で働く奴隷が25人もいる。
はっはっは。これはいいなぁ。楽して暮らせるぞ。
こんなに恵まれた立場に転生したことは今まで一度もなかったぞ。昔は良かったシリーズは素晴らしい。
「あと三日で新年ですね」
「おっ、そうなのか? 来年も楽しく過ごしたいなぁ」
新年を迎えた。
「はっはっは。明けましておめでとう、諸君……。あれ?」
広間に出ると、奴隷達が一人もいない。
「あれ、どこに行ったんだ?」
探しているうちに役人と出会った。呑気に欠伸しながら歩いている。いい気なものだ。
「おい役人さんよ、俺のところにいた奴隷達がいなくなったんだが、見ていないか?」
「奴隷? 何を言っているんだい、おまえは。今年は七年に一度の大安息年だよ。債務も奴隷状態も全部解消さ」
「は? どういうこと?」
何と、旧約聖書では貧者は富者のせいで厳しい立場に置かれているという認識もあるということで、七年に一度全てを棒引きにしてしまうらしい。
だから、奴隷達は全員自分の家に帰っていったし、貸していた金も返ってこないということだ。まあ、貸した金自体はほとんどないけれど。
『素晴らしいでしょ。七年に一度、人生リセットできるんだから』
俺は良くねえよ。
"女神の一言"
ユダヤ人やユダヤ教というとがめついというイメージがあると思いますが、旧約聖書にはこういう共同体思想も存在していました。
もっとも、外国人は例外でしたので、天成氏は外国人を奴隷にしていればよかったのかもしれませんね。
イスラームも異教信者から人頭税を取るということで、イスラームを優遇していました。
それがいつしか身内から取り立てる宗教ばかりへとなってしまいました。
嘆かわしい限りですね。
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