第22話 数というもの
俺の名前は奥洲天成。
俺は十字軍真っただ中のフランスへと転生した。
転生までの話がないって?
神共はワールドカップ決勝を見ていて、配下の天使たちがサイコロを振って転生先を決めている。
『すみませんね~、何せ4年に一度のことですので』
そう言って天使達に送り出された。
で、来た時代はというとフィリップ2世がリチャード1世と共に出て行った。そんな時代だ。
俺は行商人としてあちこちの町を渡り歩いている。
この時代の売れ線は毛織物だ。富豪へのパスポートみたいなものだな。
ということで、羊のメッカ・イングランドにやってきた。
いるわ、いるわ。羊が数百匹はいる。このくらい大勢いればさぞや壮観だろうな。
「一頭の羊から大体このくらい取れて、これだけの数がいるから、ふむふむ」
俺が紙に書いて計算していると、周りがみんなびっくりしている。
「テンセー、おまえは何をしているんだ?」
「うん? 計算だよ?」
「その魔法みたいな字は何だ?」
「魔法みたいな字?」
ああ、そうか。この時代、まだヨーロッパにアラビア数字は伝わっていなかったんだ。とすると、あれか。ローマ数字とかで計算していたのか? 実際にGoogleに聞いてもらえば分かると思うが、あれは正直計算なんてものができる代物ではない。
近年、ヨーロッパ中世は決して暗黒時代ではなかった、と言われているが、アラビア数字が伝わってくるまでは暗黒時代だったと言っても、差しさわりは無いかもしれない。そのくらい、数字の違いというのは重要だ。
「何々? 教えちゃうよ~」
あれだ、結構大変な知識とかが不発のことが多くて、シンプルな数の知識がこれだけもてはやされることになるとは。
どうやら、俺は今回こそ当たりの転生先を引き当てたらしい。
神なんかいない方がいいってことだな。
"天使の一言"
年配の人なんかだと、算盤なんかもそうですけれど、昔は今と違う計算式、数字の使い方もあったわけで色々大変でした。
ローマ数字は千より先を数えることを想定していなかったともいわれていますし、ファンタジーの下級魔物ジョーク「一、二、いっぱい」を笑えない世界が展開されていたわけですね。
こういう時代にドシンプルなアラビア数字や計算式なんかを持っていければ、これは一歩先を行くことができそうですね。
あ、ちなみに天成さんは最後の一言をうっかり聞かれてしまったようで、三日後に豚に再転生させられていました。
せっかく成功できそうだったのに残念ですが、神に文句なんかいうものではないですね。
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