第19話
俺、(認めたくはないが)被害者の女の子、舞とあおいの4人は、部室の中央に置かれた大きなテーブルを囲んで座っている。
「普通ノックくらいしてから入るもんじゃない?」
学校指定のジャージに着替えた女の子は、
「まあ陵も反省してることだし、今回は許してあげて。
女の子は愛莉というらしい。隣に座った舞がこの場を収めようとしてくれる。舞と愛莉の会話の雰囲気からして、どうやら二人は知り合いのようだ。
「だってぇ、更衣室遠すぎない? それに他に部員入ったなんて聞いてないし。こんなとこ誰も来ないと思ったのよ」
「え? 松村から俺たちのこと聞いてないのか?」
ただ黙って座っていては話が俺に不利に進んでいくことを
「聞いてないわよ。
ちっこいのと指差され、
「俺は、宮前陵。佐野中出身で、舞とは小学生のときによく遊んだ仲だ。こっちは、
「蓮沼です。よろしくお願いします」
あおいは初対面で緊張しているのか、少し声が震えている。
「幼なじみがいるとは舞から聞いてたけど、あんただったわけ? 言っとくけど、『久しぶりに再会した幼なじみに運命感じちゃって、あわよくば付き合っちゃおう』なんてキモいこと考えてたら、この学校から追放するから」
「そんなこと思ってねぇよ。てか何だよ、その典型的なラブコメの筋書きは? お前に俺を退学させる権利なんてねぇだろ。」
「
「どうりで親しいわけか......って、マジかよ? 生徒会長だったのか? どんだけギャップあるんだよ、お前。」
ただの口が悪いギャルかと思っていたが、生徒会長を務めるくらい教師や生徒からの信頼が厚いということなら、俺を退学にさせることもできてしまうかもしれない、とさっきの発言を訂正したい気持ちになる。
「似合わなくて悪かったわねぇ。まあ、舞の頼みならしょうがないわね。今回のことは水に流してあげてもいいわ。私も確かに軽率だったわ」
舞とは深い付き合いなのか。随分と信頼を寄せているようだ。
自分にも非があったと素直に認めてくるあたり、舞の言う通り案外良いやつなのかもしれない。
俺は、そんな優等生が何でアニメ研究部に入部したか気になった。
「ところで、美馬さんは」
「愛莉でいいわ。」
名前呼びを許可してくれるってことは、さっきのことは本当に許してくれたと判断していいのか。それともギャル特有のフランクさか...
「お、おう......愛莉はさ、何でまたこの部活に入ったんだよ?」
「そんなの決まってんじゃない。他の部と違って楽そうだからよ」
楽そうというのは同感だ。だが部活に入らないという選択肢もあったのに、なぜアニメ研究部に籍を置くかについては疑問が残る。
「高校でも生徒会に入ろうとは思わなかったのか?」
「いいじゃない。いちいちうるさいわね。私が何しようと勝手でしょ?」
愛莉は俺の発言が毎回
「愛莉は高校からやりたいことがあって、泉善だと校則厳しくてそれが無理だからこの学校に来たのよ」
舞がフォローに回る。
「やりたいこと?」
俺が経緯を尋ねようとしたところ、ドアをノックする音が聞こえて話は中断されてしまう。扉を開け、顧問の松村が現れた。俺もノックして入室するべきだった。
「みんな、もう自己紹介は済ませたところかしら? 盛り上がってるところ悪いんだけど、明日部長会議があって、この中から誰かに出席してもらいたいの。だから話し合って部長決めてくれる?」
「わかりました」
愛莉が
「決まったらここに名前書いて、鍵を返すときに一緒に持ってきてくれる?」
松村はそう言ってプリントを一枚机に置き、部室を出ていった。
「で、誰が部長やる?」
俺、舞、あおいの顔を順に見てくる愛莉。
「お前じゃないのかよ? 今、返事してただろ」
「返事しただけで何で部長にならなきゃいけないのよ? 私は無理。時間がない」
「私もダメかな。やっぱりここは頼りになる陵がいいんじゃないかな?」
「部活に誘ったのはお前だろ、舞。言い出しっぺが適任だろ」
部長申請書を文字通り押し付け合う俺、愛莉、舞。
「わたし、やってもいいですよ。」
手を挙げたのは、意外にもここまで静かにしていたあおいだった。
「みなさんに任せたら心配ですから。舞さんは、そそっかしいし。愛莉さんは、ところかまわず服を脱ぎ始める。宮前くんは、何というか......いかにもオタクという感じで、部の看板としてはあまり印象が良くありません。」
ストレートにディスってきた。
「「「すみません......」」」
俺、愛莉、舞はあおいに
あおいはロリでキュートな見た目とは対照的に、人の弱点をずばり指摘する鋭さを持っている。口喧嘩でもしたら、俺たちの中で実は一番強いんじゃないかという気がしている。
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