第8話
「舞、彼氏はどんな奴なんだ?」
「彼氏って、だからなんのことよ。」
俺と舞は座卓を挟んで向かい合って座っていた。
舞は恥ずかしそうにもじもじして、俺と目を合わせたがらない。
「今日の昼、駅にいただろ?トランペットの練習に朝から行ってたというのは嘘だな。」
「それはまあ嘘ついちゃったのは悪いと思うけど。」
「お前の彼氏大丈夫なのか? 舞に
真剣に話す俺をよそに、舞はなぜか笑いを
「何がおかしい?」
「さっきから何言ってるかよくわかんないけど、陵は壮大な勘違いをしてるよ。」
「どういうことだ?」
「昼に私が駅で会ってたのは、彼氏なんかじゃない。ただの友達だよ。それに女だよ。」
「...」
「お金はイベントの参加費ね。」
頭が混乱していた俺に、舞は自分のスマホの画面を見せてくる。
「これは、この前俺が池袋で見た女の子と同じ...って、舞がどうしてこの子の写真を持ってんだ?」
「さっき見たでしょ? 私のビキニ。これわたしだよ。」
「...えっ、てことは舞があの美少女?!」
写真の美少女と舞を交互に見比べ、俺は事態を理解し始めた。
「イベントってコスプレのか...」
「うん。」
「ならそう先に言えよ。なんで学校で俺が撮った写真見せたとき、自分だって言わなかったんだ?」
「だって恥ずかしいもん。陵が私の写真見てニヤついてんだもん、言い出せっこないよ。」
「おま...そう言うな。ほんとにかわいいと思ったんだ。俺が見てきた中で一番だった。」
舞はハッとして、何か言おうとしたが言葉を飲み込む。
それからまた恥ずかしそうに頬を赤らめる。
そしてまた別の写真を見せてくる。
中学校の制服を着た舞が女友達と自撮りしている写真。
その友達は髪が短くボーイッシュな見た目であるものの、舞と同じくスカートを履いていた。
「明日香さんっていって、吹部の先輩だよ。」
「たしかにこれなら浅川も間違えそうだ。」
妙に納得してしまった。
舞が美人コスプレイヤーだったとは思わなかった。
コスプレのメイクは結構濃いものだし、カラコンやウィッグをすれば誰かわからない。
「そんな際どい格好で写真撮られてるのに、俺に見られて恥ずかしいってどういうことだ?」
「コスプレしてるときは、わたしは別人なの。」
大勢のカメラを前に笑顔でポーズをこなしていたのは、舞だったけど、舞じゃなかった。
「そういうもんなのか。」
「そういうもんなの。でも陵がそんなに心配してくれると思ってなかった。」
「そりゃあ心配するだろ。」
「そっか。なんかありがとう。」
舞はぼそりと呟いて、ウィッグや杖を元のケースに戻した。
「浅川にもこのこと伝えていいか? あいつも相当心配してたんだ。」
「別に構わないけど」
舞は恥ずかしくて早くこの話を終わらせたかったのか、少しムクれ顔でそう答えた。
そこにピザを抱えた浅川が帰ってきた。
少しからかってやるとするか。
「よっ!舞。舞様のお望み通りエビマヨでございますよ。」
「浅川、お前が見たがってた舞の中学のときの写真があるぞ。」
「見たい見たい!」
舞は明日香先輩と撮った写真を浅川に見せる。
「... って、なんでだ、なんでこのイケメンが舞様の隣に?!
しかも女装なんかしやがって。」
「中学のときから付き合ってるそうだ。」
「そんな前から...」
浅川は帰ってきて早々ショックなものを見せつけられ、足がよろめく。
ピザが腕から落ちそうになるのを、俺が間一髪受け止める。
舞はそばでくすくすと笑っている。
せっかく買ってきてくれたピザをおいしくいただけないのはかわいそうだ。
俺は浅川にこれまでの経緯を話してやることにした。
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